【大いなる翼】
デゼルが3戦無敗で
オークス馬へと飛翔、優駿牝馬史を塗り替える。デビューしたのは年明け3月、
オークスに至るまでの戦歴はわずか2戦。ローテーションや体調維持など懸案材料は山積みだが、父は
ディープインパクト、母は仏1000ギニー、仏
オークスを無敗で手にした名牝。1歳すぎにアク
シデント発生し、デビューまで苦労も多かったが、新馬戦は経験馬の輪の中に入っても独特の存在感がある。スタートはもっさり。しかし、後方馬群で1000m通過・60秒7のミドルペースなど計り、進路を探しつつ、気がつけばもう先団。11秒6-11秒5-12秒5(3Fは35秒6)というレースの上りを、1秒2も速い34秒4でスイスイ。ゴール前、ぐっと突き出す、首と脚のしなやかさは格別感いっぱいだった。
続く
スイートピーSは、関東への輸送、しかしマイナスぶんは4キロ。パドックも返し馬もせかせかしたところがまるでなく、ゆったりと歩けている。鞍上のレーンも、初陣のレース内容を録画などで見ていたのだろう。発馬は出たなり、1000m通過・1分1秒1というスローを、馬のリズムに合わせ後方馬群の外目。直線入り口は大外、先頭集団とは10馬身近い差がある。だが上り3F・11秒4-10秒9-11秒2(3Fは33秒5)という超高速レースラップを、32秒5いう驚異の末脚で一気差し。ラスト2Fはおおざっぱに推測したとしても10秒5-10秒5。空恐ろしいラップを刻み込んでいる。ちなみにあの
アーモンドアイが、昨年の
安田記念で繰り出した末脚は32秒4。距離やペースは異なるものの、先輩GIに伍する能力があることを記録は物語っている。
問題は一点、前走の疲労と中二週で東京への再輸送というハードローテション。これをいかにクリアできるか。17日の日曜日の調教の時計と攻めの強弱が一つの目安になると考えていたが、栗東CWで3頭併せを敢行、僚友二頭の1秒8後ろから追いかけ、6F・82秒3-66秒5-37秒4-11秒7という快時計で楽々と抜き去っていった。
スイートピーS前もそうだったが、直前の水曜日は息を整える程度でOK。枠は1番、スタートと1コーナーの入りにさえ気を付ければ、ロスなく進める絶好枠になる。
相手は3戦無敗の
桜花賞馬
デアリングタクト、
ターゲットは明快。デビュー戦の評価は微妙、しかし次走の
エルフィンSは、直線だけで後続を0秒7差に圧倒。あの
ウオッカが持つ同レースレコードを0秒1更新する1分33秒6を叩き出した。
桜花賞は重馬場条件下で1000m通過は58秒0。良馬場なら57秒を切るか切らないか――近年の
桜花賞では異例の超速のHペースでレースは展開。末脚勝負に徹すべく、向こう正面、先団に有力どころが群がりとりつこうという場面で、一旦手綱を引き、仕切り直して外へ。いざ直線。つばぜり合いを重ねる先頭二騎とはかなりの差がある。ラスト3Fのレースラップは11秒7-12秒6-13秒8。戦前
レシステンシア陣営が思い描いていた通りの、肉を切らせて骨を断つ作戦が、一瞬は成功したかにみえたが、ゴール板が近づくにつれ、グングンと前の馬との風景が縮まる。終わって見れば1馬身半の完勝。良馬場でもタフな馬場でもどこでも伸び、そして強い。
2400mの距離云々も、将来はともかく3歳の現時点ではまったく問題ない。ゼッケン下に薄っすら汗をかき、思った以上にテンションの高いところはあるが、無観客ならスタンド前発走でも舞い上がるリスクは避けられる。前走後、松山Jが付きっ切り、精魂込め馬を造り上げコンタクトをとり、馬体もさらに張りを増した。勝負事はなかなか想像や力量通りとはいかないけれど、まともなら二頭の一騎打ち濃厚。
少し離れて、三番手は
クラヴァシュドール。サウジアラビア
ロイヤルCでは
サリオスと対戦。歩んできた路線は阪神JF、
チューリップ賞。そして
桜花賞は2歳チャンピオン、重賞勝ち馬、
トライアル勝者などがほぼ全員集結。その桜の舞台でも、メンバー中第二位の上りでしぶとく4着。一番タフなローテを歩み、そこでしっかりと結果を出してきた。父は
ハーツクライ、ポテンシャルや将来像は、あの
リスグラシューを思い出させる。前走後もへこたれていない。デムーロ連続騎乗、ラ
イバルを視野における2番枠も絶妙。
サンクテュエールは、理想像一歩手前。馬体はまだ薄い。切れ味勝負の
ディープインパクト牝馬、道悪は重い負担だったはずだが、馬場の悪化した内目から一旦グイと顔をのぞかせる根性を見せた。兄ヨシダは米国の芝・ダート両方のG1を制覇しており、2400mも得意ではなくとも守備範囲。今の東京は高速、前に行った馬は止まりにくい。ルメールJの頭には、18番枠からするすると先団に切れ込みポジションを確保、ゆったりとペースを落としスポンと抜け出る作戦を描いているか。
ミヤマザクラも連下小差。5着に敗れはしたが、距離2400m、良馬場なら
ミヤマザクラも前進が期待していい。母の兄は
クロフネ、兄
マウントロブソンは5勝、
ポポカテペトル、
ボスジラは中長距離の現役オープン。札幌の芝2000mを、従来の基準タイムを2秒1短縮する2分2秒1で駈けた時から、2020年の春の最終着地点は
オークスの舞台が見えていた。
桜花賞は田んぼのような芝に脚をとられ3コーナーすぎ手応えが怪しくなったが、直線ジワジワ盛り返す気力と体力がある。あの
桜花賞を走った後も涼しい顔でハードなCW・6F追いを2本消化、仕草も敏捷だ。
ウインマリリンは、中山の急坂・
ミモザ賞を内一気。
フローラSは1000m通過・58秒6というタフなミドルを、好位から二枚腰を使って1分58秒7のレースレコードで勝利を奪取。2400m、外枠でも、自信をもって横山典Jは進める。
ホウオウピースフルは、
ブラストワンピースの妹。東京2000m・
百日草特別を上り33秒6で一閃。
フローラSは2着惜敗したが、予定通り
オークスの
ロードマップに従っている。