日本で行われる、世界最高峰の
ジャパンC。国際競走が少なく、インターネットが普及していなかった時代の
ジャパンCは、黒船襲来のようなものでした。日本は各国の代表馬と戦うことが滅多になかった上に、外国馬の情報もあまりなかったからです。
逆に
シリウスシンボリの
凱旋門賞14着以降の日本馬の情報がほぼ途絶えた外国馬にとっては、
ジャパンCは賞金を荒稼ぎする絶好の場でもありました。よって、外国の一流馬が来日し、序盤から激しい攻防が繰り広げられ、レースは消耗戦へ。当然、ここを大目標にした真に強い馬(総合能力の高い馬)しか、勝つことができませんでした。
しかし、近年の
ジャパンCはというと、国際化社会、情報化社会で相手の脚質や能力をある程度知るゆえに、有力馬をマークする馬が存在し、スローペースが出現するようになりました。
ジャパンCのレースの質を変えたのは、東京の高速馬場と世界にその名を知らしめた
ディープインパクトの存在です。昨年こそ、ノーザンFのラビット役の
サトノシュレンが前半からぶっ飛ばして、それなりに速いペースで流れたものの、
ディープインパクトが出走した2006年以降、見事なほどスローペース化しているのです。
しかし、前半5Fが60秒を越えるスローペースだったとしても、前がラスト4-5F(3-4コーナー)あたりで後続とのリードを広げに行く、いわゆるスローからの早仕掛け戦になるので、完全なスローペースはありません。近年の
凱旋門賞もスローペース症候群で、かつてはタブーとされていた
フォルスストレートからじわじわ動いて行くのがトレンドになりましたが、同じスローペースであっても下級条件との違いは、前が早仕掛けをすること。
ゆえに前に行った馬が楽々粘り込めるようなことはなく、結局、真の実力馬しか勝てないレースになっています。今年も展開の鍵を握る独・イトウを管理するカルヴァーリョ調教師に独自取材したところ、「
ラブリーデイなど後続勢が強いので、
カレンミロティックのセカンドポジションを狙いたい」とおっしゃっていたので、前半のスローは確定的でしょう。前半のスローで内々を立ち回れる馬優勢にはなりますが、真の実力馬が勝つレースになるでしょう。
また、
ジャパンCは、
凱旋門賞の勝ち馬が
ジャパンCを勝った例がないように、ここへ向けての余力も重要になります。一番の理想は、一昨年の
ジェンティルドンナ、昨年の
エピファネイアのように、もともとG1でトップクラスのPP指数がありながら、日本馬ならば前走の
天皇賞(秋)で惜敗したタイプ、外国馬なら
凱旋門賞などの各国最高峰のレースで惜敗したタイプですが、今年は
天皇賞(秋)や
凱旋門賞に明確にこの馬は強いと言える馬がいないので、今回はもともとG1でトップクラスのPP指数がありながら、前走G1戦を使わずに力を溜めたタイプを本命にするのが好ましいかもしれません。
よって、◎は昨年の
菊花賞で3着以下を突き放して、
トーホウジャッカルとのマッチレースを演じた
サウンズオブアースを推します。この馬はこの春の2戦が不振に終わったためにあまり人気がありませんが、立て直されて挑んだ前走の
京都大賞典では、外々を回るロスがありながらも2着に巻き返せています。よって今シーズンは復調気配にあると考えて良さそうです。
○は
オーストラリア最高峰の
コーフィールドCでメンバー最速の上がり3Fで勝ち馬と0.1秒差(2着)の
トリップトゥパリス。芝4000mのG1勝ち馬が、一気の距離短縮、高速馬場で好走したというのは本質的に高速馬場の芝2400mをこなせる下地がある証。今回も内枠に入り、
コーフィールドC同様に最短距離をロングスパートする形で、上位争いを狙います。例年ならば、このレベルの外国馬は通用しませんが、今年は日本馬があまり強くないので攻めてみることにしました。
▲は
凱旋門賞の5着馬
イラプト。この馬は前々走のニエル賞で時計の掛かる馬場のオーバーペースを先行して4着に失速したことが
凱旋門賞の好走要因でもありますが、その
凱旋門賞では直線は少し挟まれて、位置取りを一旦下げながらも、
フリントシャーや
トレヴに食らいついたあたりに強さを感じました。欧州ではスタートで先頭から位置取りを下げるような競馬をしていることから、日本馬が相手でもスピード負けせずに先行できる可能性があります。