【皐月から差は開く】
サートゥルナーリアが
皐月賞の辛勝を戒めにダービーでさらなる飛躍を果たす。
皐月賞の体重は前走比マイナス4キロの496キロ、
ホープフルSより仕上げの精度はアップしていた。しかし、身体の造りはまだ水っぽい。GIにはギリギリの研磨が必要、2着敗退もあるのではないか?――ふと怖さの念も沸いてきたが、多少緩い身体でも、返し馬でグッとハミをとった時の肩や首の入れ方と推進力は尋常ではない。
好スタートを決め2コーナーを抜けるまでにある程度のポジションをうかがい、1000mは59秒1のミドルペースで通過。追い出しを開始したラスト3Fのレースラップは11秒7-11秒6-11秒4(34秒7)。GIという舞台でこの加速ラップには、馬だってビックリ。初めてムチを入れられ、全力で走っても手強い相手がいることにも驚いたが、最後は頭差押圧。「競馬は甘くない」――辛勝ゆえ逆に、ダービーへの覚悟もかたまったか。
ちなみに1分58秒1というタイムは、過去10年では4番目。全体時計に特別感はないけれど、上り3Fははっきりとした加速ラップを提示しており、Hペースや展開に助けられたわけではなく、自らの力でゴール板に向かい加速続けており、「ダービーは、
皐月賞でもっとも速い、印象的な脚を使った馬を狙え」という、古くからの格言が、
サートゥルナーリア以下上位2頭にピタリと当てはまる。
これまでのレースを見ると、
皐月賞も含め右回りは
トップギアに入るまで、勝負どころで一瞬モタつく面を見せるが、左手前で走る東京替わりはプラスと陣営は読んでいるし、単純にダービーは、モタつきを許さないほど、ギリギリに身体も作ってくるだろう。実際皐月の時よりは、脂肪が抜け、後肢もきちっと入るようになり、立ち姿の腰の位置が高くなっている。鞍上はレーン。手代わりに不足なし。
精密でタフな上りラップを思うと、今年の
皐月賞上位馬は相当に強力だ。対抗は素直に皐月2着の
ヴェロックスを推奨したい。
2歳秋の野路菊賞や東京スポーツ杯の頃は、数字はともかく胸前が薄い。腰が固まり切れず、ここぞというところでもうひと押しが効かなかった。
ただ、2歳秋の東スポ杯の頃から、返し馬のスケール圧巻。四肢や胸、腰に力が付けば必ずダービーの舞台に、主役に近い形でくるだろうという思いを抱いていたが、
若駒S・
若葉Sと、陣営と川田が手塩にかけ心身を磨き、GI仕様の動き出しを丁寧に教え込んできた。不利を被り結果2着に敗れたものの、
皐月賞でもっとも早くスパートを開始し、勝ちに行ったのは
ヴェロックス。
すらりとした四肢と背中を思えば急坂の中山よりは東京のほうがいい。木曜日発表の体重は482キロ(皐月は478キロ)、中間また一段、後肢を中心として全身に筋肉がつき身体も張ってきた。
ダノンキングリーの凄みを帯びた造りと瞬発力も特筆モノ。返し馬のスピードは、世代間ではもちろん、古馬GIクラスと見比べてもなお秀一なきらめきがある。刻んできた時計も、
ひいらぎ賞は1分33秒7、
共同通信杯・1分46秒8は過去十年で第二位、上り32秒9という超速ラップでイン強襲を決めている。
皐月賞も外二頭と通ったコースはまったく別。競り負けて力尽きて3着に落ちたのではなく、馬体をあわさることのないままの3着。決して勝負付けが終わっているワケではない。
ただ、
共同通信杯も
皐月賞も、インがぽっかり空いたことのは確か。2400mで外々を回して同じ脚がつかえるかとなると判断に迷う(それでも決して大きくは負けないだろうが)。
一発大駆けがあれば、キングギドラ級の怪獣
シュヴァルツリーゼの大外強襲。デビュー戦は、上り12秒-11秒1-11秒0(3Fは34秒1)というレースラップに対し自身のソレは33秒6。ラスト2F・推定10秒5前後の猛烈な末脚を駆使。
弥生賞も大外をブン回し、最速の上りで大外強襲も決めた。
皐月賞はキャリア不足もあったが、重馬場を走った反動もあったかもしれない。良馬場、東京替わりで激変。終わってみれば奇跡のダービー馬――桁違いの馬だったんだなと、後々考えることになるかもしれない。
皐月賞の上位3頭は少なくとも2頭は崩れない。連下を探しても
アドマイヤジャスタ止まり。
京都新聞杯や
青葉賞などの別路線組に、今年は時計やラップ的根拠を強調したい馬が少ない。