【輝きは失せない】
アーモンドアイが
天皇賞(秋)の連覇、日本競馬史上初の芝GI8勝奪取に挑もうとしている。
3歳は
桜花賞、
オークス、
秋華賞と、牝馬三冠を制覇。続く
ジャパンCを2分20秒6のレコードで制し、3歳秋に早くも古馬も撃破した。2019年の4歳は、春は
ドバイターフ優勝、秋の天皇賞はレースレコードに0秒1差、歴代2位の1分56秒2でイン一気。その勢いははてのないものに見えた。
しかし、
有馬記念は9着失速。熱発、香港遠征見送りの影響など体調不良もあったか。競走人生で初めて馬券対象外に沈んだが、5歳となった本年、
ヴィクトリアマイルは馬なりで楽勝。続く
安田記念は、
グランアレグリアという短距離-マイルの巨大新星の急襲に遭遇、2着とひざを折った。さすがの
アーモンドアイにも陰りが出たか。疑心の声もささやかれるようになったが、前年の
安田記念は1分30秒9(3着)、上り32秒4。本年の
ヴィクトリアマイルは1分30秒6、上り32秒9。ラップ形態、切れ味はほぼ互角といっていい。
安田記念2着は、競争人生初の中二週。デキ自体もあまりよくなかったところに、ハードローテが加わり摩耗。急速な能力の低下は考えにくく、敗因は体調ひと息にすぎない。
思えばこの
アーモンドアイも、いや、
ディープインパクトだって、
コントレイルだって、いつも完璧、絶好調なワケがない。
アーモンドアイには爪や後肢の不安。どこかしら密かに傷みを抱え、祈るような思いで送り出し、結果を出したこともあった。
なんて、ひと夏を馬体調整にあて、いざ秋の陣。美浦トレセンに帰厩し、10月4日に初時計。28日の本追い切りまで長短8本、南W5F追いは3本。昨年の天皇賞前と、まったく同じ調教数を消化。数もこなしたが、春二戦と違って躍動感がまったく違う。パドックも、歩様も馬体も小さくこじんまり、地味に見せるときもあるが(完調でなくても勝つ)、この秋は、後肢の充実、四肢の踏ん張りが前期と一変。木曜日発表の体重は496キロと、少し太っちょ。首回りを厚く見せるのはご愛敬だが、例えば同じ国枝厩舎の三冠牝馬
アパパネの引退前のように、脂肪が身体全体に回ってはいない。
懸案のスタートも、腰に筋肉がついてさえいれば、スタートも踏ん張ってポンと出る。好位を素早く奪えば、自分のフットワークでリズムを取り、3歳秋のJCのような先行策、昨年の
天皇賞(秋)の、流れるような絶妙の中団差しが濃厚。よしんば出遅れたとしても、四肢に不安が少なければ、上り32秒台のオニ脚が使える。距離2000mはベスト。どこまでも速く、悠々として強い現役最強馬の走りを、晴天の下、目に焼き付けたいものです。