【記録が後押し】
ディアスティマで大冒券。本格化までに時間を要したが、二走前のグッドラックHは後続に1秒2差をつける大楽勝。2分35秒7という走破時計は同日の
有馬記念と0秒7差。7馬身という着差などを加味すれば、GIも意識できるところに接近している。
続く
松籟Sは背中と首をゆっさゆっさと揺すり、ド迫力の青鹿毛馬へとさらに進化を遂げ、後続を力でねじ伏せる逃げ切り。天皇賞と同じ舞台となる阪神3200mを経験できたのは何よりの強みになる。
本年の阪神3200は、スタートは2コーナーの中間地点。曲がったらすぐに長い
バックストレッチへ侵入、3-4コーナーを回ってスタンド前の坂を通過。一周目は外回りを走るが、2周目の3コーナーから内回りへと切り替わり、長い直線の坂を二度登ることになる。直線平坦の京都3200mよりタフでト
リッキーな舞台設定だ。
ディアスティマは、
松籟Sの枠順は13番枠。先頭に立つまで外々を回され、内で張り合う馬などもいてスタート後の2F目から11秒1-11秒1-11秒9で展開、1000m通過は59秒4のHピッチを刻んだ。9-10Fにかけ13秒台にラップが落ちつき2000m通過は2分3秒1に緩んだものの、2000-3000mにかけ再び11秒台のラップが4つも並ぶ心臓破りの乱ペースとなった。
さすがに終い1Fは12秒6を要したものの、後続とは3馬身の完勝。記念すべき優勝タイムは3分14秒9だった。
ちなみに3000m通過は3分2秒3。外回りコーナーが緩くピッチが上がりやすい。内回りより全体時計も速くなるが、内回り3000mの
阪神大賞典は、重馬場で行われた今年は参考外として、昨年の
ユーキャンスマイルの決着タイムは3分3秒0。
過去十年では2017年の
サトノダイヤモンドの3分2秒6が最速だった。3000m通過・3分2秒3の
松籟Sのレース内容はコースの違いを差し引きしてもかなり濃い。京都3200mの天皇賞の決着タイムは、昨年の
フィエールマンは3分15秒0。2013年の
フェノーメノは3分14秒2、レコードは、2017年の
キタサンブラックの3分12秒5だ。
ちょっと強引な比べ方ではあるが、
松籟Sの3分14秒9は、春の天皇賞の中においても記録的に十分いい立ち位置にある。58キロという斤量で結果を出していないのが弱点ではあるが、そこには目をつぶって◎。枠は5番、すかさず先手を取れる好枠を引き当てた。堂々の力の逃げを期待したい。
強敵は
アリストテレス。3歳春は
プリンシパル6着で投了したが、夏の新潟・
出雲崎特別を1分59秒7・上り33秒2で完勝。続く
小牧特別は1000m通過・1分0秒7-2000m通過・1分59秒9というよどみのない流れを、4コーナー手前ではもう先頭。坂上2F標識近辺では11秒0という高速ラップを繰り出し後続を完封。2分11秒9という走破タイムは、翌週の
神戸新聞杯より0秒6速く、
菊花賞クビ差2着、
AJCC優勝で時計の意味や意義を改めて証明した。
阪神大賞典は肉体疲労、ストレスもたまっていたのだろう。道中
テンションが高く、
AJCCとは違う、脚がズボリと嵌るようなタフな重馬場の影響もあったか。直線中ほど、さあこれからという場面で、突然息が詰まるようにして止まってしまったが、調教で息の入りや体力をルメールJが二度確認。レース運びは器用、ト
リッキーなコースにも対応可能。良馬場なら巻き返し濃厚。
単穴は
ワールドプレミア。2019年の
菊花賞馬、同年の
有馬記念は強豪古馬相手に3着と好走し、将来の立ち位置を確認したかに見えた。だが好事魔多し。11カ月もの長期休養を余儀なくされ、おそるおそるの仕上げで臨んだJCが6着、続く
有馬記念は5着。前走の
日経賞は最速の上りで3着入線と、徐々に調子を取り戻してきたが、中間さらに調教の負荷をアップ。それに応え、上昇度合も目を見張る。若干器用さに欠けるものの、スタミナと決め手なら負けない。
ディープボンドはクラシック三冠は10・5・4着に終わった。だが
阪神大賞典は502キロに増量、筋肉の束がクッキリ浮き上がった黒光りする馬体を造り上げた。先行して力強いラップを4ハロン近く維持できる
パワーとスタミナが備わった。
同レース2着の
ユーキャンスマイルは、前年の
阪神大賞典優勝、本年は2着。調子に波のあるタイプだが、調教は入念かつハード。キャリア最高のコンディションに持ち込めた。
右回りでは芳しい結果が出ていないが、
ダイヤモンドS首差2着の
オーソリティも体調は上々。折り合えがつけば、ト
リッキーな阪神3200mは先行有利に運べる。