【劇的】
皐月賞から一カ月、
ダノンベルーガが驚くような変化を遂げている。2022年のダービーを睨み、2歳11月・東京・芝2000mデビュー。前半1000mは62秒4のスロー、直線ジンワリ外目に持ち出し、身体を起こしフォームが定まるのを待ち、11秒2-11秒2-11秒5(3Fは33秒9)というレースラップを、自身・33秒1で直強襲。ラスト2Fは推定10秒台をマーク――文字通りの加速ラップで外一気を決めた。
ただ若馬時代にトモを傷めたらしく、右後肢の蹄の返しが少し硬い。二戦目の
共同通信杯も馬を攻めきれない。全体にうっすら脂肪が残る造りではあったが、3コーナー過ぎ行き脚がつき、上がり3F・11秒3-11秒2-11秒8(34秒3)というレースラップに対し、自身のソレは33秒7。2F標識まで追い出しを待つ余裕があり、ラスト1Fは推定11秒1。馬場は稍重、馬場差は推定1秒5と見当をつければ、1分47秒9というタイムも上がりも、記録および能力は前年の
共同通信杯の勝者
エフフォーリア級と互角といっていい。
皐月賞は初の右回り、枠は最内1番。内と外では明らかなトラックバイアスがあり、強引は承知。少しでも馬場のいいところを走らせようと3-4番手にあえて出して行ったが、一度も外に持ち出せない。終始芝の傷んだ内を回るしかなく、残り100mで力尽きてしまった。しかし0秒3差は十分に逆転の範囲内。
皐月賞は左回り2400mのダービーのための、あくまで
ステップレースでもある。前走後は美浦トレセンに在厩し入念に調教メニューを組み、一週前の南Wの追い切りでは川田Jを背に6F・77秒9-上がり1F・11秒0という猛時計を計測。懸念されたハードワークの反動もなく、木曜日発表の体重は496kg(前走比-8kg)。トモのラインがクッキリ浮き出し、四肢と首の返しが目に見えて真っすぐ速くなり加速準備は万全。
対抗の
イクイノックスも、最大目標はダービーにあり。起点となる能力ベースはなんといっても東京スポーツ杯。前半はスロー、定番の上がり勝負。だが後半5Fはすべて11秒台を計測。上がり3F・11秒0-11秒9-11秒4(34秒3)というレースラップを、32秒9でゴボウ抜き。1分46秒2という走破時計は、
コントレイルの1分44秒5、
イスラボニータの1分45秒9、
コディーノの1分46秒0に次ぐ第4位ではあるが、加速ラップの数値や2馬身半という着差を加味すると、実質第2位くらいの価値があるように思う。
皐月賞は
ダノンベルーガと同じく三戦目、こちらは芝コンディションの影響を受けにくい大外18番を引き当てラッキー。492キロ(+10キロ)で増量にも成功したが、数字はともかく縦から見るとまだ腰回りが細く頼りない。ルメールJも前進気勢を抑えきれず、ややエキサイト気味の3角からスパートを許してしまった。直線半ば先頭ゴールが決まったかに思えても、残り100mで内にフラリ。中山の急坂を上り切る体力と
パワーが腰に備わっていなかった。
ただ、
皐月賞はあくまでダービーの一里塚。本当によくなるのは夏を過ぎた
菊花賞の頃だろうが、調教の負荷を一段上げ、緩みがとれたことで後肢の踏み込みも深めになり、腰回りの
バランスが明らかに向上している。東スポ杯で府中競馬場の坂の加速度合は証明済み。今年はハナを切りたい逃げ馬が二頭、前半極端なスローは考えにくく、縦長で展開すれば18番枠でもポジションが決めやすい。
三番手は
ドウデュース。
朝日杯FSを制し、前哨戦の
弥生賞は2着。中山2000mというコースと距離には目途が立ったかにみえた。馬場状態を想うと、
皐月賞の戦法は外差しでいい。ただ湿り気の残るコーナー4つの小回りはイメージしていたより進みが遅い。4角を回ったときは14番手、さすがにあの大外では、最速の33秒8を駆使しても届かない。もったいない3着だったが、「
皐月賞でもっとも印象に残った脚を使った馬こそダービーは買い」という格言は今もしっかりと生きている。右回りよりは左回りのほうが手前も代わりフットワークはスムーズ。本質はマイラー、ただし心身ともに常に健やか。馬体も薄皮一枚厚みを削いだ。3歳春なら2400mでも普通に勝負になる。
皐月賞馬
ジオグリフは、父はダートス
プリンターの
ドレフォン。マイルや渋った馬場を経験してきたキャリア、洋芝の
札幌2歳S圧勝通り、
パワーを要する
皐月賞の馬場は
ドンピシャの条件だった。適距離はきっと9-10F、2400mはプラスとはならないけれど、マイナス材料はそうない。力差もごくわずか、軽く扱ってはいけない。
キラーアビリティの巻き返しにも注目。小倉2000mを1分59秒5のレコード、上がり2F・11秒8-10秒8で突き抜け、
ホープフルSを2分0秒6のレースレコードで駈けた。
皐月賞は4番枠で出遅れ、もっとも傷んだインを泣く泣く進むしかなく、持ち味である切れと瞬発力をもぎ取られてしまった。大箱の東京コースは、どこで動き出すか。却って脚の使いどころがデリケートになるが、金曜日の大雨から馬場も回復。立場は
チャレンジャー、道中は馬込みで我慢、脚をため真っすぐに直線一気のスパートを心掛ければ大金星があるかもしれない。
連穴は
オニャンコポン。
ホープフルSの先行策失敗を契機に、
京成杯で戦法を追い込みにガラリ一変。
アクセルを踏むのが少し遅れたが、
皐月賞の坂上の脚色はダービーでも連下に要注意を思わせた。
ピースオブエイトの
毎日杯の価値も穴に一考。稍重条件下・前半1000mは59秒6、マイル通過・1分35秒0は、同日の古馬2勝クラスの決着タイムより0秒7も速く、坂上二枚腰を使い身体にも芯がある。前年の
シャフリヤールより地味だが1分47秒5は、中山の
弥生賞や
スプリングSより価値がある。