【勝負のカギは実は前半2-3F】
イクイノックスの存在感と素質が、秋は鮮やかに際立つ。起点となる能力ベースは2歳秋の東京スポーツ杯。定番のスローの上り勝負ではあるが、後半5Fはすべて11秒台を計測。上り3F・11秒0-11秒9-11秒4(34秒3)というレースラップを、32秒9でゴボウ抜き。圧巻の加速装置を備えていることがわかった。
ベルベットのような漆黒の肌と艶、
シルエットは極上品。横から見ると父
キタサンブラックの
シルエットが自然にだぶるが、縦から見ると薄く腰が小さい。
皐月賞は頑張って492キロ(前走比+10キロ)に増やして出走したものの、まだ精神的にも幼く、エキサイト気味に3角からスパートを許してしまい、中山の急坂を駆け上り踏ん張り切る
パワーが腰に備わっていなかった。
ただダービーは調教の負荷を一段上げ、緩みがとれたことで後肢の踏み込みも深めになり、腰回りの
バランスが明らかに向上。前半1000mを58秒9のHピッチで推移、後半6Fを過ぎてもラップは緩まず。マイル通過は1分34秒9-1800m通過は1分46秒7-2000m通過は1分58秒2-2200mは2分9秒9。9-12Fの通過タイムは、どれもその距離の重賞の決着タイムに近く、レースの上りを1秒6上回る33秒6でクビ差2着。あと一歩
ドウデュースをとらえきれなかったが、2分21秒9のダービーレコードで走破。
充電期間を設け馬体成長を促し、春よりは厚みを増しているが、正直なところいまなお成長途上。理想像には達していないけれど、肩回りは大きくなり前肢の掻き込みは力強くなった。これなら前半、ある程度前目の位置にとりついていける。
パンサラッサという強力な逃げ馬が名を連ね、停滞なくレースは流れるだろう。勝負の重要ポイントはむしろ前半。枠の内外の隣りにラ
イバルたちがひしめき合い、スタートしてからの2Fをコスられることなくスムーズに抜け、向こう正面で
リラックスできるかどうか。そこが一番のカギになるが、立場的にはマークする立場にポジションを置く馬。前半さえ不利なく切り抜ければ先頭ゴールへの道が自ずと見える。
第一本線は
シャフリヤール。昨年のダービーは2分22秒5、上りは33秒4。本年のダービーより全体時計は少し遅いが、ラスト1000mのレースラップは57秒0。本年より2秒速く、上りラップの数値はシャフリが上。内容的にはほぼ互角のHレベルだった。
神戸新聞杯は不良馬場に泣き、JCはその疲労が抜けきれず3着と伸びあぐねたが、
ドバイシーマクラシックは
BCターフを強襲し芝12Fの世界の頂点に立ったユビアーをクビ差封印。
プリンスオブウェールズは4頭立てながら一身にマークを集め、終始外々を回されスタミナを削られてしまった。
アスコットの急坂とタフな芝に脚を取られてしまったが、4着ながらも大バテはしていない。舞台と芝状態が替われば巻き返しは当然。12FのGIを2勝しているが体型はむしろ10F向き。この距離なら折り合いやスタミナを気にすることなく、自信をもって正攻法の好位差しがとれることをC・デムーロは知っている。
大駆けがあれば
ダノンベルーガ。新馬戦、
共同通信杯のラップと記録は本命とほぼ同数値。
皐月賞は右回り、1番枠を引き荒れたインに押し込められてしまった。眦を決して挑んだダービーは、意欲と意図が空回り。目いっぱいの調教がアダとなり、懸案の腰にさらに負担がかかりフォームを崩してしまった。
道中二度三度厳しいプレッシャーを受け体力を削られ、やむなく内に切れ込み4着死守で終わってしまったが、完調でなくても春よりは腰の送りと掻き込みは
バランスがとれている。上位の人気は分散、ダービーよりは自由に動ける。