【余裕が伸びやかさを生む】クラシック三冠最後・
菊花賞の真打は、
皐月賞馬
ソールオリエンス。デビューは2歳11月、牝馬と見間違いそうな華奢な造りでも、3歳1月の
京成杯は外に膨らむロスがありながら、直線中山の急坂を一気にワープ。
皐月賞は終始12秒半ばのラップが続き1000m通過は58秒5のHペースで展開したが、レースの上がりを1秒7上回る35秒5――重馬場条件下ラスト2Fを推定11秒7-11秒6見当の末脚を繰り出し、世代のラ
イバルたちを一気にのみ込んだ。しかし
日本ダービーは一転1000m通過は60秒4のスロー、近年でもごくまれな単調な上がり勝負。レースの上がりは35秒3なのに、上位入線馬のソレはこぞって33秒前半。時計や数字で強弱の選別がし辛くなったが、1-2着馬は
皐月賞の2・1着。一冠目の熾烈な
皐月賞が3歳世代の序列付けの大本なのだろう。その中心に位置するのは
ソールオリエンス。
日本ダービーは過大な人気を背負い、しかもスロー。馬込みは経験できたが、道中のフォームが鞍上・鞍下ともに窮屈になり、直線外に出すタイミングがわずかに遅れたぶんクビ差2着に後れを取ったが、勝ち馬
タスティエーラと力はまったくの五分でいい。ひと夏越え、まだ馬体は未完成ながら、歩様にもブレが少なくなり、何よりパドックや併せ馬でリキんだりすることがなくなった。
セントライト記念はスタートから最後まで構えを大きくとり、終始外を回したぶん2着に終わったが、心身ともに摩耗は少なく済んだ。14番枠も
セントライト記念の経験が生きる?
日本ダービーで馬群を経験しており、スタンド前通過時点で、どこかで内に潜り込めれば3000mも楽々。京都は直線の入り口が広く、極端に外を回すことなく叩き出して行けばいい。
強敵は
タスティエーラ。
皐月賞は乱ペースを捌き直線坂上では勝負あったかに見えた。負けて強しとはあの2着だろう。
日本ダービーへと向かう1カ月半の間に心身とも驚くほど精度の高い馬に造り変え、100点満点の競馬をサラリとやってのけた。時計云々はさておき、馬造りとは何かを一番に考え、尊敬できる
日本ダービーだったなぁ。なんて、
日本ダービーからぶっつけという野心的なローテーションもまたよし。調教の質量や馬体の姿形、力感溢れるフォームは、
オークスから
秋華賞へ直行、横綱競馬でモノにした先週の
リバティアイランドと酷似している。鞍上はモレイラJ、名手は距離が長くなるほど、持てる技術を誰よりも上手に使う。
三番手は
サトノグランツ。父
サトノダイヤモンド譲りの、やや晩成系のスタミナ型。春は
京都新聞杯を勝ち
日本ダービーは11着。春はスピード不足、見せ場なく終わったものの、
神戸新聞杯は馬群を突き破ってレコ勝ち。川田Jの腕ももちろん大きく、ツボにハマった感じもあったが、京都の走りは一番に会得。たぶん今度もロスなくタイトな馬込みを捌いての強襲策に出るだろう。
まだ幼さが散見するが、
ドゥレッツァは東京10Fで上がり32秒7という破格の脚が使え、前走の
日本海Sも先行有利の内回りを悠々後方から直強襲。いくぶん追い出しの反応が鈍いところがあるが、ルメールJは過去10年
菊花賞2勝2着2回3着1回、今年の
天皇賞(春)のレース運びにも唸った。試練の大外枠を引いてしまったが、条件戦からGIへ、新時代を築く可能性を秘めている。
神戸新聞杯は寸でのところで頭差強襲に屈したけれど、
サヴォーナの力量は
サトノグランツとほぼ互角。中間CW追いを取り入れ馬体もビルドアップ。重くなっても距離が延びてもきっとバテない。
ハーツコンチェルトは前走大事に外を回したぶん、追い込み届かずの5着に敗れたが、前哨戦とすれば
ソールオリエンスと共通点あり。大穴1番枠を引いた
トップナイフ。前走離された2着のぶん、最後の△となったが、本年の
札幌記念はメンバー的にもレース内容も出色。