毎週月曜日に更新される、No.1予想の「今週の見どころ」でも綴りましたが、AJCCは上がり馬よりも実績馬優勢のレースです。上がり馬が多く参戦する、G3ならば準オープンとそれほど変わらない、ゆったりとしたペース(実質、直線だけの競馬)になることもしばしばあるために、上がり馬が勢いで突破することもあります。
しかし、AJCCはG2。当然、G2の勝ち馬や、G1でも上位入線した実績のある総合能力の高いメンバーが相手となります。この時季の中山は時計が掛かる上に、前半から強い先行馬の先行争いが激化して、息が入れづらい流れとなるために、勢いある馬のトップスピードの速さだけでは通用しないのです。仮に勢いある馬が先行争いに加わらない差し、追い込みタイプだとしても、先団から大きく離されないようにと自然と追走に脚を使ってしまうため、十分な余力を残して直線に挑むことができず、いつもの末脚が不発してしまうことが多いのです。
競走馬のトップスピードの速さは素質的なもの。陸上競技の100m走が大人よりも少年、少女のほうが得意であるように、キャリアの浅い若い馬ほど瞬発力はあります。しかし、競走馬のスタミナは後天的なもので、これは経験を積むことでしか得られないものです。つまり、上がり馬が連対しているパターンというのは消耗戦を経験している馬にほぼ限定され、それ以外は実績馬が連対しているのです。
よって、今年も実績馬。◎は緩みのないペースで流れた、昨年のこのレースの勝ち馬
ダノンバラードとします。確かに昨年はお行儀の悪い勝ち方で、降着をめぐる新ルールに関して波紋を呼びましたが、好位からポジションを押し上げて、その後の
アルゼンチン共和国杯で2着となる
アドマイヤラクティを完封したのは、誰の目から見ても疑いようのない事実。また、その強さを証明するかのように、タフな馬場状態で行われた昨年の
宝塚記念で2着と検討しました。
前走の
有馬記念は馬場が厳しいところに先行争いが想定していたよりも厳しくなってしまい、結局、逃げ、先行馬は総壊滅のレースとなってしまいました。
ルルーシュが3コーナーで早々とバテたことを考えれば、
ダノンバラードの前走15着はそこまで悲観する着順ではありません。むしろ、あれだけタフな競馬を経験すれば今回は相当スタミナアップした状態で出走してくるはず。
また、先週から中山の芝コースはそれまでと比較すると軽くなっており、年末の中山芝コースほどタフな状態ではなくなっています。
有馬記念のときと比べると、かなり先行馬にとって楽な馬場状態となっているのです。そこにきて今回のメンバーは差し、追い込み馬が中心のメンバー構成。実績馬が結果を残すことが多いAJCCの歴史から考えても、勝ち馬にもっともマッチするのは
ダノンバラードでしょう。
○は昨年秋の
オールカマーを休養明けながら勝利した
ヴェルデグリーン。
オールカマーとAJCCは舞台がともに中山芝2200m。同じ舞台で好結果を残している実績は大きなアドバンテージとなります。次走の
天皇賞(秋)では8着に敗れましたが、
オールカマーで激走しすぎたダメージが残っていたもので仕方のないところ。しかし、前走の
有馬記念は展開も向きながら10着とやや不甲斐ない内容ではありました。10月末から約2ヵ月開いた臨戦過程では、あの極限のスタミナレースに対応するには難しいところがあったのかもしれません。しかし、今回は前走の経験が生きるので息持ちはかなりよくなるでしょう。
オールカマーの再現があってもおかしくない実績馬です。
▲は雨の影響でかなりタフな馬場状態となった前走
アンドロメダSを長期休養明けで大逃げした
サトノシュレン。
アンドロメダSは勝ち馬
ラウンドワールドの走破タイムが芝2000mで2分02秒1。上がり3Fが35秒8も掛かったのですから、相当なスタミナ比べのレースだったと言えます。そのタフな馬場状態を休養明けであれだけぶっ飛ばせば大バテするのは当然と言えるでしょう。追い込み馬の
ラウンドワールドを連れて来た張本人です。
しかし、
サトノシュレンは、昨年4月の中山芝2200mの準オープン・
湾岸Sを逃げ切っているように、スタミナを生かす競馬を得意とするタイプです。この馬は前走でかなりの消耗戦を経験したことで、今回では大幅にスタミナアップが見込めます。今回は相手強化の一戦となりますが、逃げ、先行型の馬が少ない今回ならば、自分の力を出し切って、見せ場は十分作ってくれるでしょう。