マイルの最高峰・
安田記念は、ハイペースになることはあってもスローペースになることは、あまりないレースです。あまりないというよりは、過去10年で平均ペースはあってもスローペースで決着したことが一度もありません。3歳馬限定の
NHKマイルCや古馬牝馬限定の
ヴィクトリアマイルは、3-4コーナーで一息入れますが、最高峰の
安田記念ではよっぽどの道悪にならない限り緩むことがないのです。また、道悪になっても結果から見れば息を入れるのが足りな過ぎて、一昨年前に逃げた
ミッキーアイルのように2桁着順まで大失速してしまうことがよくあります。
しかし、今年は王者
モーリスを恐れて、過去10年、20年遡ってももっとも頭数が少ない12頭立て。
グラスワンダーを恐れて小頭数になった1999年の14頭立ての
安田記念よりも頭数が少ないです。逃げるのは
クラレント、番手は外から
レッドアリオンと橋口厩舎勢の2頭が先手を主張する形。まして
クラレントの鞍上がハイペースでは逃げたがらない小牧騎手。とてもペースが上がりそうにありませんが、
ロゴタイプの田辺騎手が捲って「やっぱり例年どおりの
安田記念だった…」ということになるのでしょうか?それとも天気予報どおりにひと雨降って、道悪の
安田記念らしい決着になるのかもしれません。
正直、今年に関しては、展開が見えてきません。ただ、ひとつ言えるのは、ぶっつけ本番で
チャンピオンズマイルをハイパフォーマンスで制した
モーリスは二走ボケを起こす可能性があるということ。これまで
モーリスをマイル路線の絶対王者として、本命にすることが多かった私ですが、それは
モーリスが空洞化したマイル路線に咲いた一輪の花だったからこそ。
確かに
モーリスの自己べストのPP指数は、2着以下を3馬身差突き放した昨年のダービー卿CTですが、その次走の
安田記念では凡走。勝ちに行く競馬をしたこともあり、
ヴァンセンヌにクビ差、
クラレントに0.2秒差迫られる実に危うい勝ち方でした。つまり、ローテーション上に破たんがあれば、そのレベルまでパフォーマンスを落とす可能性ががあるということです。昨年の
安田記念が今年のメンバーだったならば、
モーリスは負けていたとまでは言いませんが、勝てなかった可能性も十分あります。なぜなら昨年の
安田記念で
モーリスがマークしたPP指数は、中距離路線ならば凡戦、昨年の凡戦・
有馬記念と変わらないレベルの指数だからです。これならば中距離のトップクラスにも出番が巡ってきます。
よって、◎には前走
ドバイターフを好位から突き抜けて完勝した
リアルスティールを推します。
リアルスティールは休養明け緒戦、まともな仕上がりではなかった前々走の
中山記念で3着。今年の
中山記念は、
ドゥラメンテや
アンビシャスのその後の活躍からもおわかり頂けるように、G2とは思えないほどのハイレベル戦でした。
中山記念がハイレベル戦だったのは、比較的に安定した結果を残す
ロゴタイプや
イスラボニータが7着、9着まで沈んだことからも察しがつくでしょう。
休養明けで
中山記念を制した
ドゥラメンテは、その次走の
ドバイシーマクラシックでは、上昇度を見せることは出来ませんでしたが、2着馬
アンビシャスは次走の
大阪杯で今年の
天皇賞(春)の勝ち馬
キタサンブラックや昨年の
ジャパンCの勝ち馬
ショウナンパンドラや昨秋の
天皇賞(秋)の勝ち馬
ラブリーデイを一蹴してV。もはや勢力図が入れ替わってしまっているのです。
中山記念の上位3頭が現役トップクラスです。確かに
リアルスティールもドバイ遠征後の疲れで凡退する可能性も考えられますが、矢作厩舎の叩き台で明らかに太目残りだった今年の
中山記念で勝ち馬と0.1秒差ならば、ある程度のパフォーマンスで走ってきてくれるでしょう。
リアルスティールの今年に入ってからの成長力に期待します。
○は、昨年1月に長期休養明けから復帰して目下7連勝中の
モーリス。日本と香港のマイルG1を制すことは並大抵のことではなく、強いのは間違いありません。ただ、
モーリスは末脚を生かしてこその後半型の馬なので、昨年の
安田記念のように横綱競馬をすると脆さを見せます、今回も後方からの競馬ならば十分チャンスはありますが、前が引っ張らない可能性もあるメンバー構成のなかでそういう競馬ができるのでしょうか。
ちなみに1999年に絶対王者と目された
グラスワンダーは、各馬に包囲され、進路確保のために直線早め先頭の競馬を余儀なくされて、2着に失速しました。チャンピオンの立場で後方一気を決めるのは、出負けでもしない限りなかなか難しいことです。昨年の
安田記念でも例年の
安田記念と比較したら上がらないペースにしびれを切らして勝ちに行ったように、並みの心臓の騎手では取りこぼしてもOKの騎乗は出来ないでしょう。今回はそのあたりを懸念しての対抗評価です。
▲は、昨年の
毎日王冠で
エイシンヒカリと0.2秒差の2着、そこからさらに力をつけて前々走の
AJCCを勝利した
ディサイファ。前走の
日経賞では、テンのスピードの違いで逃げの形となって5着に失速しましたが、マイル戦ならば自ら主導権を握る必要がないはず。同馬は芝1800mでも先行して粘る競馬をしていることからこの距離に対する不安はありませんが、前走から一気に距離が短くなると楽に追走できない場合もあるので3番手評価までとしました。
ディサイファは
サトノアラジンとそれほど変わらない力関係。
サトノアラジンが展開と馬場の後押しで前走の
京王杯SCで能力を出し切ってしまい、前哨戦を前哨戦として使えなかったのに対して、こちらは距離「?」の芝2500m戦を使ったことで能力を出し切れていないので、
ディサイファを買い目に加えて
サトノアラジンは買い目から外すことにしました。