【漆黒の弾丸】
ダノンキングリーの凄み、才能、中距離における立ち位置を、9F・
毎日王冠で改めて問いたい。紐解けばデビュー戦、上り33秒4の加速ラップで東京マイルを串刺し。続く
ひいらぎ賞は、直線半ばで早々に勝負あった。流し気味のフィニッシュで、2歳レコードに0秒3差、1分33秒7で楽々とかけた。
共同通信杯の1分46秒8も、過去十年で第二位というHレベル決着、10秒台のラップを含む32秒9という超速ラップも出色。
ただ内一気の鮮やかさが脳裏に色濃くインプットされてしまったか。一冠目の
皐月賞はイン強襲を敢行。外二頭と馬体が併さることなく、結果的にはもったいない3着となってしまった。次走はダービー、
リオンリオンが使命感に燃えて元気よく、前半1000mを57秒8でというHペースで飛ばす。二番手を
ロジャーバローズがポツリと追走、三番手とはまた差が開き縦長隊列。ひとつのレースの中でHペース、平均、スローという、三つの流れが同時に生じる難しいダービーになった。
ダノンのポジションは好位。前も気になるが、後ろのほうがもっと怖い。直線入り口、外から最大の強敵
サートゥルナーリアを動かす気配がする。連れてもう一頭
ヴェロックス。人気3頭の距離が一気に縮まり、
ロジャーバローズものみ込むかに見えたが、残り1F、前とのさが縮まらない。2分22秒6はマークしたものの、先行絶対有利の馬場に泣きクビ差2着で
フィニッシュラインを通過。なんとも残念、自然体で勝ちに行けばアッサリもあったかもしれないダービーだった。
ただ、戸崎をしてためらわせたのは、どこかに2400mという距離の壁。本質はマイラーに近い中距離馬ではないかという思いがあったように思う。ならば秋は、
毎日王冠から
天皇賞(秋)へ。明確なレース設定と、しっかりとした身体造りを心掛けてきた。返し馬のスピード、黒い弾丸と化す姿は、あの
ミスターシービーにソックリ。サラブレッドの造形美も堪能したいものだ。
第一目標は
アエロリット。GIはNHKマイル優勝、古馬となって今春の
安田記念をクビ差2着に奮闘した、左回りを得意とする超一流マイラー。昨年の
毎日王冠は、ラスト3F目から10秒9にペースを上げ、終い2Fを11秒2-11秒7でパンチアウト。コースレコードに0秒2差と迫る1分44秒5で牡馬を一蹴している。一週前に南Wでミッシリと6F追いを敢行、直前は坂路で上り重点という臨戦態勢や時計の出し方は、昨年とほぼ同じ。
三番手は
インディチャンプ。
アーモンドアイや
ダノンプレミアムなど、ラ
イバルたちに不利があったにせよ、
安田記念は他力に頼るのではなく自分のリズムで完封劇をはたした。マイルだけが必ずしも最終着地点ではない。そういう馬にはしたくない。
例えるなら厩舎の先輩
カンパニー。
毎日王冠を
ステップに、
天皇賞(秋)、
マイルCSを連勝した、GI馬に習い倣え。先を見据えた仕上げにしろ、本追い切りの坂路のハードワークには、そうした意図みたいなものがうかがえる。9F、58キロでも勝ち負けで爪痕を残しておきたい。
ペルシアンナイトは、春の
安田記念は、発馬で痛恨の不利。
札幌記念は2000m、0秒3差なら合格点。キャリアは豊富だが、まだ5歳。馬体に陰りなどなく、東京9Fにも柔軟に対応できる体力がある。
ギベオンは
NHKマイルC2着歴もある4歳馬。馬体造りを今一度見直し、闘志と躍動感が戻ってきた。立場は気楽、直線勝負に徹すれば馬券圏内。