【秋の予感】
エスポワールが想像を超えた飛躍を果たす。3歳1月の1勝クラス2着時、468キロという体重が、6月の阪神戦では486キロへと増加。ラスト3F・11秒4-10秒8-11秒6(33秒8)というレースの上りを、自身33秒1で楽々と差し切って見せた。
続く
シンガポールTC賞は、後続を0秒7とチギる圧勝、決着タイムは重馬場で2分0秒8だった。前日の
マレーシアC(3勝クラス)は稍重で2分0秒8――1秒以上の馬場差、そして着差などを加味すれば、もうひとクラス上のオープンや、GIIIに匹敵する中身の濃いレースといっていい。
この競馬の精度の高さと破壊力があれば
トライアルはもう不要。前走後はここ一本に絞り、中間CWの6F追いも調教メニュー加えた。最終追い切りの坂路は、時計は控えめ。しかし丸々と膨らんだ腰回りの厚み、送りの深さと強さは尋常ではない。
ちなみに母系は
バレークイーンを大本として(その
母サンプリンセスは、英
オークス、英セントレジャー勝ち、
凱旋門賞2着)、近親には
皐月賞馬
ヴィクトリーや
リンカーン(
阪神大賞典)が連なる良族。半兄
アドミラブルは、無念のダービー3着。
しかし、父
オルフェーヴルの栗色の肌艶や健康感を備えた妹は、力強いグリップで湿った芝も豪快に加速。ふたを開ければびっくりする、GI馬へ確変の予感。真摯なシュタルケとのコンビも絵になります。
強敵は
ダノンファンタジー。阪神JF、
チューリップ賞を連勝し、いざ迎えた
桜花賞は体調下降、4着と躓いてしまった。
オークスは、体調はV字回復。正攻法の好位差しに打って出たが、2400mはどう乗っても長い、結果5着で春は終わった。
秋は馬体整備と同時に精神面のケアも心掛け、
ローズSは前半1000m・59秒3というスローペースにも、意識的に馬群の中で我慢。レースが動いたのは残り4F標識から。11秒7-11秒0-10秒5-11秒9と(3Fは33秒4)、阪神の外回り特有の瞬発力勝負となったが、一完歩ごとに最速の上りでラ
イバルたちに迫り、抜き去り、終わってみれば1分44秒4の
ローズSのレースレコードをマーク。
春とは違い、馬体の摩耗もなく
テンションも押さえられており、羽が生えているように動きは「軽い」。ワンターンの阪神9Fからコーナー4つの内回り京都2000mに舞台はかわるが、今の川田Jが大きな
ミスリードをするとは思えない。
単穴は
カレンブーケドール、緻密な組み立てができれば逆転Vも有望。現3歳世代は、一連の
トライアルから好メンバーが揃い、
桜花賞は1分32秒7のレコード、
オークスも2分22秒8のレコードという、歴史的にみても屈指のHレベル決着をみた。
その中でも密度の濃いのが
オークスだったか。1000m通過は59秒1-2000m通過・1分58秒9というタフなミドルラップで進み、ラスト4Fから11秒7に突入、11秒4-11秒6-12秒3という、才能の一滴まで絞り切る力勝負となった。2分22秒8というタイムはダービーと0秒2差。クビ差2着に惜敗を喫したものの、3着とは2馬半の決定的な能力差があった。
ステップレースの
紫苑Sは、先を見越したソフトな仕上げ。道中折り合いを欠くシーンなどあり、ゴール寸前末を甘くしたが、今回は3週にわたって併せ馬を敢行。前走と同じ坂路仕上げでも、馬体の張りと闘志が違う。
パッシングスルーは、
フローラS4着後、福島2勝クラスを0秒5差で圧勝、
紫苑Sは1分58秒3・上り33秒8で勝負強く首位を奪った。いかにも上り馬らしく、馬体やフットワークをさらに大きく見せている。
クロノジェネシスは、
桜花賞は内に閉じ込められ、もったいない3着。
オークスは好スタートを切り好位にとりついたまではよかったが、よどみのないミドルラップに体力を失い、終わって見ればいくぶん距離も長かった。
秋華賞直行は早くから決断、筋肉をつければいいこともあるが、失うものもあるかもしれないけれど、木曜日発表の体重は458キロに増えている。
サトノダムゼルは、デビュー以来無傷の3連勝。
白井特別は着差はわずかだったが、ゴール前は手綱を抑えつつ、重馬場を上り33秒8で余裕のフィニッシュ。半兄にはGI馬の名も連なり、血統馬ならではの極薄の皮膚と光沢をもつ。