【前人未踏】
アーモンドアイが、8つめのGI奪取に
アタック。
日本競馬史における前人未踏の境地へ踏み込む。
桜花賞を皮切りに牝馬クラシック三冠を制覇、続く
ジャパンCを2分20秒6のレコードで制し、3歳秋に早くも古馬も撃破した。4歳春は
ドバイターフ優勝、秋は天皇盾を手にした。
有馬記念は熱発の影響など体調不良もあったか。折り合いに苦労し、競争人生で初めて馬券対象外の9着に沈んだが、
ヴィクトリアマイルは馬なりで楽勝。能力と復調度合の両方を再確認できた。前走は無観客ということもあるだろう。パドックでは気合不足に映るくらいおとなしい。ヨロの筋肉が丸く膨らみ充実し、後肢の左右の運びが均等なときは、出遅れの不安も小さくなる。競馬場にいないとわからないのが切ないが、本馬場入場になると雰囲気は一変。闘志に火がつき一気に馬体が大きく膨らむのも同馬の魅力です。
改めて
ヴィクトリアマイルは、懸案のスタートダッシュを決め、道中はロスなく好位のポケットで静かに折り合い、
サウンドキアラが動き仕掛けるのを待って、残り2F標識で合図を送ると瞬時に加速。ちょっと行儀は悪いが、最後ルメールは、後ろを見ながら余力残しでゴールテープを切っている。中二週というキャリア初のローテーションを問題視する小さな声もあるが、牝馬に限らず中一週というのは、疲れが抜けきれず馬体は硬くなり、予想の上で個人的にも、もっとも避ける材料ではあります。
しかし、中二週で、調教もしっかり3本消化できているとなれば、体調もほぼ問題ないか。よもやスタートミスがあったとしても、去年の
安田記念を糧に、進路や追い出しを工夫してくる。
対抗は
インディチャンプ。前年の
安田記念は
アーモンドアイにアク
シデント発生、転がり込んできたGIタイトルのようにも言われた。しかし、秋の
マイルCS快勝で、マイル王者の力を改めて天下に布武。香港遠征はGIで力を振り絞ったあとの疲労やイレ込みが災い。1800mの
中山記念は1Fが長く4着に敗れたが、
マイラーズCを余裕残しで楽勝。坂路調教も依然と比べるとフォームは乱れにくくなり見違えるように走るようになった。前走は九分なら春の
ピークは
安田記念。陣営も福永Jも、マイルGI・
タイトルホルダーとしてアーモンドとセメントマッチだ。
ちなみに東京マイルの◎と○の代表戦績は以下の通り。
■
ヴィクトリアマイル 1分30秒6(良)1000m通過・56秒7 上り3F・11秒2-11秒1-11秒6(33秒9) 勝ち馬の上り32秒9
■2019年・
安田記念 1分30秒9(良) 1000m通過・57秒0 上り3F・11秒1-11秒2-11秒6(33秒9) 勝ち馬の上り32秒9
前半1000mにわずかの開きはあるものの、レースラップおよび両者の上りは、双子といっていいくらいにウリ二つ。能力は高いレベルで拮抗していることがよくわかる。
従って、この二頭の強者に割って入る――あるいは逆転劇を呼び起こすとすれば、能力を記録および数値で示すことが必要になる。第一候補は
グランアレグリア。体調が安定せず戦績に波はあるものの、紐解けば、2歳6月・東京マイルの新馬勝ちのタイム・1分33秒6は歴史的な快挙だった。
桜花賞は
アーモンドアイのタイムを0秒4更新、歴代最速の1分32秒7のレコードで後続を0秒4差にチギり捨てた。昨年暮れの
阪神Cは、レコードにコンマ1秒差、二着を0秒8と突き離し人々の度肝を抜いた。
高松宮記念は追い込み届かずの2着に泣いたが(繰り上がり)、馬体は486キロにまで増量。肩、腹回りの筋肉がパンパンに張り、若馬時代とは別馬のような重量感と貫録を漂わせている。よほど体力がありあまっているのだろう。上り3Fや坂路が主体の藤沢厩舎が、タフな6F追いを自分のリズムで上伸びと走らせている。鞍上はビッグレースで度々ロングショットを決めてきた池添J、目標は二頭、そして戦法は直線勝負と明快。
ダノンキングリーも、本質はマイラーに近い中距離馬。紐解けば、2歳暮れの中山マイル・
ひいらぎ賞を、2歳レコードに0秒3差の1分33秒7で快走。明け3歳・
共同通信杯の走破時計は過去十年で第二位、32秒9という出色の上りラップを叩き出した。
皐月賞はアタマ差3着、ダービーは2分22秒6という高速決着をクビ差2着の接戦を演じた世代きっての逸材。
クラシックは無冠に終わったものの、古馬初対決の
毎日王冠を1分44秒4で一閃。
マイルCSは初の関西遠征、ペースはスロー。枠順は1番、馬場の傷んだ内を終始進むしかなく、初めて馬券対象から外れてしまったが、
中山記念ですかさず巻き返し。
大阪杯は1000m通過は1分0秒4。見た目の数字はスローだが、執拗に外から被さられ絡まれ、息の入らない展開が誤算。ただ、見方をかえれば、あの苦しい競馬で3着は立派。鞍上も人気も立場は
チャレンジャー、戸崎とのコンビが復活、静かに思いを込めてGIに向かえるはず。
ダノンプレミアムは、昨春
マイラーズCで
インディチャンプ以下を圧倒し、マイル王の座をかけ
安田記念に挑んだ。発馬で大きな不利を被り大敗、捲土重来を期し秋の
マイルCSへと向かったが、再び
インディチャンプに返り討ちにあってしまった。いや、まだ東京マイルでは、本当の勝負付けは済んでいない。遠征明後の状態もよく、坂路で入念に瞬発力も磨いた。勝負はこれからという思いも感じるが、相手が一頭ならともかく強敵は二頭だと大変。
アドマイヤマーズは、これまで見てきた
ダイワメジャー産駒の牡馬で屈指ともいえる良駒。しかし、タフな前回の香港の芝のような条件ならともかく、上り3F内にどこかで現れる11秒を切るような東京高速ラップに一瞬対応がきかない。弱点は理解しているだけに、早めに抜け出しどう叩き出ししのぎ切るか。陣営も川田Jも熟考中…。