【女王を追う者は】
グランアレグリアは、現秋屈指の無敵のマイル女王。ス
プリントGIのタイトルも保持しているが、1600m戦績は[5011]。
桜花賞・1分32秒7のレコードをはじめ、昨年の
安田記念は、あの
アーモンドアイを横綱相撲で0秒4差に封じ込めた。二走前の
マイルCSは、四方を囲まれ一瞬行き場を失うピンチ。しかしひと呼吸待ち外に持ち出し、即座にトップへ
ギアチェンジ。最後は周りを確認しながらゴールテープを切る余裕があった。今春は別
ジャンルのGI・2000mの
大阪杯へ
アタック。
しかし風景が霞むほどの豪雨、特別な重馬場適性がある馬しか対応できない。マイラーにとってはより辛いスタミナ勝負になってしまい4着入線…。前走後の課題は一点、体調はいかなるものか。体調との闘いがまずは先決。しかし経過を見ると、短期放牧を挟み5月1日から美浦トレセンで時計を出しはじめ、一週前の5日には南W6F・81秒8をマーク。8、9日にも軽く坂路で丁寧に時計を出し、木曜日発表の体重は500キロ(前走比+4キロ)。ダメージは最小限に抑えられた。東京マイルの良馬場決着なら遠慮はいらない。フルスロットルでエンジン全開、5つめのGIタイトル奪取に挑む。
対抗はひとつ年下の4歳牝馬
レシステンシア、最強マイラーに追いつけ追い越せ。阪神JFを従来の記録を0秒4塗り替える1分32秒7のレコードで駈けたスピードスター。重馬場の
桜花賞を手一杯に粘り2着に奮闘。しかし
NHKマイルCは道悪を激走した桜の反動もあったか、476キロに馬体が細化。資質だけで2着は確保したものの、その後骨折が判明。
復帰緒戦の
マイルCSは中身が伴わず8着に終わったが、本調子を取り戻した
阪急杯は、1000m通過・56秒6というよどみのない流れを自らが牽引。残り2Fめ一気に10秒8にペースアップ(1200m通過は1分7秒4)、最後の1Fを11秒8でまとめ1分19秒2のレコードを悠々叩き出した。ちなみに一昨年、同じ阪神7Fの半阪神Cを
グランアレグリアは1分19秒4(後続に0秒8差)で楽勝。同レースを起点に後のGI3勝へとつなげたが、
レシステンシアの戦績や持ち時計は、グランと同等かそれ以上。
高松宮記念は枠順、展開、重馬場など重なり2着に敗れたが、逃げなくとも十分競馬ができた。中間の調教では、意識的に前半部分は我慢、指示を受けてから一気に加速。マイル対応の準備も怠りなく進めた。一年前の
NHKマイルC2着時とは心身の強度もまったく違う。
三番手は
デゼル。母は無敗で仏1000ギニー、
オークスを制した名牝。3歳3月デビュー、
スイートピーS一気差しで
オークスの権利を得たが、2カ月に3走は正直キツい。本番は460キロに細化、11着に沈んでしまった…。夏を越え秋になっても、まだ目いっぱいには造り切れない。
ローズS4着後は自己条件から再出発したが、
初音Sを快勝。続くGIII・
阪神牝馬Sは10秒7-10秒8-11秒7(3Fは33秒2)という高速のレースラップを上り32秒5で直強襲。前走後はタフな7F追いを消化できる体力も備わり、GI奪取に大きく前進しようとしている。
マジックキャッスルも上位争いに虎視眈々。
秋華賞2着、
愛知杯は444キロにビルドアップを果たし待望の重賞タイトルをもぎとった。
阪神牝馬Sは終始外から
デゼルからプレッシャーをかけられ蓋をされ、直線は密集馬群に突っ込むしかなかったが、クビ差2着は展開のアヤといっていい。大箱の東京は走りは伸びやか。関東圏の競馬とあれば、身体もふっくらと造れる。
ダービー卿CTは、ハンデと展開に多少恵まれた感じもしたが、近い将来
テルツェットはGIでも勝負できるようになるだろう。折り合って、一瞬の隙も見せずレースを組み立てれば
マルターズディオサの一発。