アドマイヤムーンは種牡馬としてはあまり自己主張するほうではなく、◎も芝短距離で4勝した母のスピードが強く出ているが、母よりは胴伸びがある体型だし、ヘイロー4×4らしい無駄のない脚さばきと、母が持つ「ラウンドテーブルとナスルーラ」の組み合わせクロスの柔らかさで走る馬だから、洋芝1200mよりは京都1400mのほうがベターだろう。ここも好位抜け出しでいける。

　素質ならタキオン産駒の好配合馬○が一番だが、どう見てもマイラーではなく中距離馬で、高速馬場の1400mで◎に抜け出されると差し切るのはなかなか大変だ。

　☆はインリアリティの母の全姉妹クロスの影響でスプリンター丸出しの体型をしている。ベストは1200mで、ここもスピードと完成度で好走はするだろうが勝ちきるまではどうか。

　△は函館2歳Sで◎にしたが、フェアリーキングとノーザンテーストのパワーと粘りで走る血統で高速馬場よりは洋芝がベター。アドマイヤムーン譲りのしなやかなストライドが外回り向きの▲のほうを上にみたい。

　まずは過去5年のファタンジーSで馬券圏内に入った馬の調教タイプをご覧ください。

2006年
1着アストンマーチャン/標準坂路
2着イクスキューズ/乗込併用
3着ハロースピード/標準トラック

2007年
1着オディール/標準多め坂路
2着エイムアットビップ/標準坂路
3着エイシンパンサー/馬ナリ平均坂路

2008年
1着イナズマアマリリス/標準多め坂路
2着ワンカラット/乗込併用
3着アディアフォーン/標準坂路

2009年
1着タガノエリザベート/標準多めトラック
2着ベストクルーズ/標準多めトラック
3着グレナディーン/標準坂路

2010年
1着マルモセーラ/一杯平均坂路主体
2着ホーマンフリップ/標準多め坂路
3着ホエールキャプチャ/標準多め併用

　2009年こそ、トラック単一調教馬の1着2着という年もありましたが、その他はすべて坂路単一か坂路系統の調教タイプが勝利。ファンタジーSを勝つためには坂路調教が必要不可欠という傾向が出ています。

　またこの中で最も人気がなかったのは、2008年イマズマアマリリス13番人気。この馬が勝ったのは標準多め坂路という調教タイプで適性が高かったからでしょう。

　そういった意味で今年のファンタジーSから調教タイプが最適なのはツーオブアスとブロッケンの2頭でしょう。

　◎ツーオブアスの前走について笹田和秀調教師は「行きたがるのを抑えて直線に向けば、伸びると思ったけど、追って案外だったという印象。それなら行きたいままに走らせてみた方がいいかなと思います」と直線で伸び切れなかった敗因と次走への展望を教えてくれました。

　坂路で本数多い調教タイプだけに、瞬発力で勝負するよりもスピードに乗った脚を長く持続させることが可能なはず。仮にハナを切る流れになったとしても、早々に失速するということはまずないでしょう。

　中3週で5本の○ブロッケンももちろん評価できますが、追い切りの強さが弱くなっている点だけが心配。そこに問題がなければ、2頭で馬券に絡む確率も非常に高いと思います。

1.ニコールバローズ
今回：標準坂路
前回：標準併用

2.レディーメグネイト
今回：標準坂路
前回：標準少め坂路

3.アンチュラス
今回：標準併用
前回：標準トラック

4.ブロッケン
今回：標準多め坂路
前回：標準坂路主体

5.ファインチョイス
今回：標準併用
前回：馬ナリ平均トラック

6.ミラクルピッチ
今回：標準トラック
前回：標準トラック

7.サヴァーレ
今回：標準坂路主体
前回：標準多め坂路

8.タガノルミナーレ
今回：標準併用
前回：急仕上げ併用

9.ドナメデューサ
今回：連闘
前回：標準多め併用

10.ミスマルシゲ
今回：標準トラック
前回：一杯平均坂路

11.タガノミュルザンヌ
今回：標準トラック
前回：標準トラック

12.アイムユアーズ
今回：馬ナリ平均併用
前回：標準少めトラック

13.エイシンキンチェム
今回：標準併用
前回：標準多め併用

14.ツーオブアス
今回：標準多め坂路
前回：標準多め坂路主体

15.ゴールデンムーン
今回：標準坂路
前回：標準坂路

16.ヒーラ
今回：標準併用
前回：軽目トラック

17.ビウイッチアス
今回：標準少め坂路
前回：標準坂路

　相変わらず高速馬場が続く京都芝コース。今週からBコース替わりで、1200mからの転戦組が多いだけに、テンの速いペースへの対応力を重視したい。

　本命はニコールバローズ。前走の新潟2歳Sでは13着に惨敗しているが、マイナス20キロの馬体減が影響した面もあるだろう。指数的に注目したいのはむしろ新馬戦(芝1200m)で、初戦としては高水準の｢80｣をマークしている。新馬戦としては異例ともいえるテンの3F・32.9秒のハイラップを追走して差し切った経験が、今回の高速馬場で活きると読む。

５番：休み明けも仕上がる。上位争い。
13番：筋肉質の好馬体。馬場も渋ってきたし、これなら勝てそう。
15番：肉付き良くなった。上位争いできる。

【センスをチョイス】ファインチョイスは、新馬戦を2着に0秒5差をつける圧勝。続く函館2歳Sも、ステッキを持ちだすことなく、馬の気分と勢い任せ、馬なりで後続を1馬身半差と振り切る楽勝を演じている。どこでどう動けば勝てるか、馬が競馬を知っている。栗東トレセン入り後も、変な馬体減りや高揚もなく、古馬を相手に長め6ハロンから意識的に末脚を伸ばす、タフなコース追いを4本消化。折り合いや距離延長対応も調教で見えた。3連勝で阪神JFに乗り込む。エイシンキンチェムは、これぞサラブレッドという造形美を誇る。前走のダリア賞では、1400mという距離や折り合い、将来を想定し、馬込みと外差しを覚え込ませた。ただ、前二戦に比べると、調教時計と動きの精度が落ちる。いくぶん仕上げが甘いかもしれない。割って入ればゴールデンムーン。りんどう賞は、上がり34秒4で外一気の2着。開幕週の高速馬場とはいえ、1分21秒1という時計も優秀だ。タガノミュルザンヌの新馬戦は、残り1ハロンで、みるみる後続馬の姿が遠ざかるスケールの大きな競馬。1分23秒台の持ち時計や上がりラップからは、確たる能力を読み切れないものの、デビュー戦は、15―15程度の稽古で、本追い切りは正味一本。上積みも大きい。同じくアンチュラスも、走破タイムからは断言し辛いが、CW・11秒台の上がりを目にすると、脚がたまればもっともっと弾けそうな予感。関西圏への輸送がカギになるが、カンナS勝ち馬のビウイッチアスも、中間坂路で48秒3という破格の時計をマーク。デキはいい。アイムユアーズも、輸送減りさえなければ、差はわずか。

　ファンタジーSにおける1戦1勝馬は、ここ数年は人気になってそれを裏切るケースが目立っているがその前はいい馬券になっていた。結局のところ、ヒントが少ない馬たちなので「人気なら嫌う、人気薄なら買う」ということでよいのではと思う。

　今年の出走馬では、◎タガノルミナーレがさほど人気にはならなさそうなので狙ってみたいところだ。

　同馬の面白いところはタニノギムレット産駒であるというところ。ギムレット産駒はコースを選ぶところがあり、ワンペースでレースが運びやすい1400m戦には向く。特に京都芝1400mは新潟芝1400mと並んで好成績。

　さらにファンタジーSの場合は収得賞金を加算したい馬たちばかりなので前へ前へという展開になるだろうし、ましてや今回はフルゲート。地力が足りるかどうかはやってみないと分からないが、展開自体は向くはずだ。

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【上位拮抗】エイシンキンチェムはデビューから無傷の2連勝。追ってしっかりしており、重賞初制覇を飾るか。ファインチョイスも2戦2勝と底を見せていない。函館2歳S勝ち馬で距離を克服できれば。レディーメグネイトの前走は好時計で快勝。スピードはここでもヒケを取らない。タガノミュルザンヌは初戦が強い勝ちっぷりだった。アンチュラス、アイムユアーズ、ビウイッチアスを押さえる。

　◎エイシンキンチェムは「フジキセキ×ミスターグリーリー」という組み合わせ。父フジキセキはミスタープロスペクター系の血と相性がよく、シアトルスルーを併せ持つ形はサダムパテック、アドマイヤサガスと同じ。2歳戦向きの素軽さや完成の早さを感じさせる。

　初戦を圧勝したように京都コースは合う。マイディアガール＝トレジャーチェスト5×4という鮮やかな全きょうだいクロスを持っており、素質の高さはかなりのもの。時計の速い決着にも不安はない。