安田記念と言えば、ハイペースが定番のレースで、過去10年を振り返ってもスローペースだった年は一度もありません。よく“東京マイルは簡単には逃げ切れない”という格言のようなものを耳にしますが、これは秋の京都・
マイルCSは逃げ馬が連対することもしばしばあるのに対して、
安田記念では逃げ、先行馬が綺麗に崩れるからこそ生まれた言葉でもあります。
確かに昨年の
安田記念も、不良馬場にして1F平均ほぼ12秒のかなりの消耗戦で破竹の5連勝で
NHKマイルCを制し、3歳マイル路線の頂点に立ったはずの逃げ馬
ミッキーアイルが16着に惨敗しました。あのペースでは古馬トップクラスの逃げ馬でも粘れるはずもなく、しかたがない結果でした。
しかし、今年はというと、ハイペースになる要素があまりないのです。その理由は、下記の5つです。
(1)基本ベースが例年以上の高速馬場で前が簡単には止まらない状況にあること。
(2)本日、土曜日はやや時計が掛かっていたものの、明日は馬場回復化。これにより騎手は様子を探りながらの騎乗となるために、仕掛け遅れが発生しやすいこと。
(3)今年は
安田記念の前哨戦が全てスローペースで、その流れで勝ち負けした馬たちが、あえてハイペースにしてギャンブルを打つ必要性がないこと。
(4)テンがそれほど早くない、中距離戦の逃げ馬
カレンブラックヒルが外枠に入ったこと。
(5)
カレンブラックに応戦できる
ミッキーアイルが内枠を引いたものの、昨年の
安田記念の大惨敗をきっかけに、位置取りを後ろに意識していること。
ここまで条件が揃うと、G1の舞台なので完全なスローペースとまではいかずとも、これまでよりもスローよりの流れになるはず。平均ペースの前提だと、この路線は買うべき馬が絞り切れないので、ここは
安田記念史上初のスローペースが誕生するという前提で馬券を組み立てます。
◎は前走
マイラーズCでは直線でいったん後続を引き離しながらも2着に敗れた
サンライズメジャーです。今年の
マイラーズCは超スローペースだったために、
サンライズメジャーの逃げての2着はペースに恵まれたフロックといういう評価のようで、あまり人気がありません。しかし、近5走の成績を見るとすべて3着以内、それも勝ち馬から僅かな差のレースを繰り返しているように、ここにきての充実ぶりは侮れないものがあります。
今回はコースロスなく立ち回れる最内枠。前走は確かに恵まれた面があったことは否定できませんが、今回のレースでも再度とても恵まれてしまいそうな枠順を引き当てました。このあたりは
京都新聞杯でコースロスなく立ち回れた
サトノラーゼンが、続く
日本ダービーでもコースロスなく立ち回り、2着した流れに良く似ています。今回は差し脚自慢の馬が多い状況ゆえに、
サンライズメジャーの自在性は有利な展開を引き込みやすいでしょう。
○は昨年の
マイルCSでは勝ちに行った分だけ勝ち馬に差されて2着惜敗となってしまいましたが、能力は十分G1級のものがあると評価できる
フィエロ。前走の
マイラーズCではコースロスを最小限に抑えるために内を突いたのですが、結果的に直線でやや追い辛くなってしまい、完全燃焼できない結果となりました。今回はひと叩きされての東京コース、真価が問われる一戦となります。
▲は今年に入ってから3連勝、前走のダービー卿CTで重賞初制覇を飾った
モーリス。特に前走の内容は破格で、ラスト1F10秒台のラップを刻み、後続に3馬身以上の差をつけて圧勝でした。PP指数も優秀で、前走はまさにG1級の走りだったと言えます。
前走であれだけ派手なレースをしてしまっただけに、レース後はさすがに疲労がかなり出たと思われますが、レース間隔を約2ヵ月開けたことにより、それなりに疲労は取れたのではないかと推測されます。しかし、前走のような直線一気のレースぶりでは、展開に大きく左右されてしまうので全幅の信頼は置き辛いもの。王者不在のマイル路線に終止符を打って欲しいという願いもありますが、死角もあるわりに配当があまりつかないので狙い下げました。