『今週の見どころ』では、前後半イーブンペースを意識して逃げる、
武豊騎手の逃げは、“強い馬を勝たせる逃げ”だと綴りました。
武豊騎手はもともと出遅れ率が低く、逃げ馬に乗れば一番最初にスタートを切り、二の脚の速さに拍車を加えるところがあります。そういう逃げを打つことで、他の逃げ馬に競らせないメリットはありますが、3-4F目でそれほど息を入れずに、淡々とした流れを作ることから、あまり逃げ馬を逃がすには向いていない騎手です。
エイシンヒカリの前走、
都大路Sでは前半5F58秒8-後半5F58秒8の逃げでしたが、これだと強い逃げ馬しか勝てません。イーブンラップの逃げは、ラスト3F33-34秒台で上がってこられないダート競馬ならばかなり理想的な逃げですが、芝のレースだと前半59秒8-後半5F57秒8というような後傾ラップが逃げ馬を残らせるという意味では理想です。
実際に前半5F62秒5-後半5F58秒1の超後傾ラップを刻んだ
三木特別では、
エイシンヒカリ自身がメンバー最速の上がり3F32秒8をマークして圧勝しています。もちろん、クラスが上がるほど前半で後続がプレッシャーをかけてきて、楽に逃がしてはもらえなくなるものですが、それを考慮しても、
武豊騎手の逃げは、自身が騎乗している逃げ馬のことを考えた場合、“もうちょっとペース落としたほうがいいんじゃないの?”と思うことがしばしばです。
しかし、それを逆手に取れば、
武豊騎手が逃げるレースでは、展開に恵まれて紛れてくる馬が、まず、いないので勝負しやすいということです。そんなこんなで自分にプレッシャーをかけてしまいましたが、◎は
エイシンヒカリがイーブンペースで引っ張った昨年のチャレンジCで2着の
フルーキーです。チャレンジCでは後方で脚を溜めた
トーセンスターダムにクビ差、差されましたが、この馬自身も最内から伸びて来る
デウスウルトを相手にしぶとく伸びていました。
この馬は決め手不足のところがあり、マイル戦もこなせなくはないのですが、マイル戦だと前半である程度の位置を取るか、決め手を生かすかしないと通用しないところがあるので、そういう意味ではあまり向きません。超高速馬場の前走マイラーズCは超高速馬場だったために内を狙ったのですが、結果的に前が詰まって立て直す不利がありました。前が詰まらなければ勝てていた可能性もありますが、結局、位置取りに泣いた形となりました。しかし、今回は逃げる
エイシンヒカリが淀みないペースで引っ張るでしょうから、能力発揮には申し分ない流れとなるはずです。今回のレースは大チャンスでしょう。
○は昨年のこのレースの勝ち馬
ディサイファ。この馬は前走の
中日新聞杯を完勝したように、高い能力を保持しています。今回のレースで人気となっている
サトノアラジン、
エイシンヒカリは前走で能力を出し切った感が強く、疲労残りが懸念されます。一方で
ディサイファは前走で能力を出し切った後、ゆっくりと休ませてから今回の一戦に向かってきているので、疲労残りは懸念しなくてもよいでしょう。問題は近走スローペースのレースばかりしか経験していないことですが、前走の
中日新聞杯は、開幕初日でも時計の掛かる馬場コンディションだったことを考えると、そこまでのスローではないので、速い流れにも対応してくる可能性が高いと見ました。
▲は下級条件ではキレ負けを繰り返したものの、
武豊騎手に逃げもしくは、単騎2番手を意識した騎乗をしてもらえるようになって強くなった
アーデント。タフな馬場コンディションの4走前・リゲルSの逃げ切りは、強いとしか言いようがないレースでした。
アーデントは地味ながら近走は安定したレースぶりで、今回マークされる立場から開放されつつ、自分の流れを
エイシンヒカリに作ってもらえるのがグッドポイント。今回は、
サトノアラジンと
エイシンヒカリの2頭が前走の派手なレースぶりを評価されて人気となっています。しかし、ああいった派手なレースぶりは続けて出来るものではなく、次走大敗といった結果を呼ぶことがあります。
エイシンヒカリのチャレンジC大敗がまさにそれでした。今回の人気2頭は能力で圧勝か大敗かという結果になりやすい状況だけに、穴中の穴は
アーデントということになります。