【勝利のカウントダウン】
モーリスは、現マイルシーンはもちろん、日本競馬界史上屈指の強豪マイラー。引退前まで予定は
天皇賞(秋)と
香港マイル(または
香港カップ)のあと二戦。日本での最終章は、東京2000m・
天皇賞(秋)で完結する。2016年のGI勝ちは
チャンピオンズマイルひとつ。
安田記念はスローに泣き、
札幌記念は道悪適性により優れた堀厩舎の僚友
ネオリアリズムに遅れをとったものの、10Fの
札幌記念を
ステップレースに選んだ意味は、秋は2000mの天皇賞で勝ち負けに持っていくという志の表明でもある。
ひも解けば、ダービー卿CTでは中山の急坂を33秒0という破格の加速力で一気差し。ムーアとのコンビで
マイルCS・
香港マイルを完勝。ムーアをして「世界最強マイラー」という言葉もポロリと漏れた、昨年の年度代表馬。左回りの東京は
安田記念の戦績が示す通りフットワークがギコちないことは確か。距離2000mもギリギリ。しかし、慎重で知られ、5F追いを軸とする堀師が、一週前の20日の調教では、6F・83秒0―68秒2―37秒8―12秒7という、
モーリス自身経験したことのない、後先なしのハードワークを課してきた。枠は8番、良馬場の追い比べなら、終わってみればムーア……諸々の案件をすべて払拭できる可能性に賭けたい。
対抗は
ラブリーデイ。昨年の
天皇賞(秋)制覇を
ピークに、それ以降は連絡みから遠ざかっているものの、馬体を造りなおし、
京都大賞典が3着。上がり4Fのレースラップは11秒9―11秒1―11秒1―11秒5(3Fは33秒7)というレースラップを、闘志を前面に押し出し、一旦
キタサンブラックに並びかけるシーンを演出した。今更だが、1800-2000mで5勝を挙げているように、前回は距離も長かった。馬体の張り、艶も前年に似てきた。
単穴は
エイシンヒカリ。イスパーン賞圧勝の価値や世界の中でのレーティングは、海外通ではないので(笑)、正直ピンとこない。しかし、東京は
エプソムCが1分45秒4・
毎日王冠が1分45秒6。一昨年の
アイルランドT・1分58秒3(外に大きくヨレながら)は、堂々たる秋の天皇賞馬の下地になりうる。着外3回は、自分でリズムを崩して沈没。一週前追い切りでは、道中引っかけられて
武豊も苦笑い。依然として、危うさも同居した脆いタイプではあるが、枠は1番、戦法は逃げとシンプル。
ルージュバックも、東京は〔3101〕。
毎日王冠は1000m通過が1分0秒3の緩ペース。上がりに比重が高くなるのは当然とはいえ、ラスト4F・11秒8―11秒4―11秒5―11秒6(3Fは34秒5)というレースラップを1秒1も上回る33秒4で外一気。牝馬による
毎日王冠制覇は歴史的ともいえるが、数字的にも東京9Fの特別なスペシャリストであることを証明している。ただ、56キロを背負って、中二週。牡馬混合のGIは、数字通りかなり荷が重い。
毎日王冠で上がり33秒6でクビ差2着の
アンビシャスも、気性云々やイレ込みの度合いはともかく、
中山記念の1分45秒9と上がり33秒6、
大阪杯の上がり33秒4で天皇賞圏内に限りなく近づいているが、58キロの斤量で勝ったことがない点が、最後は気がかり。
となると
ステファノス。
毎日王冠は直線行き場を失い、競馬になったのは正味1Fだったが、今年もきっと
エイシンヒカリがミドルラップで飛ばす。前年2着同様、レース内容一変の追い込みを期待していい。
リアルスティールは、一週前の追い切りを見ると、
毎日王冠を
スキップしたのは正解。ただ、GIを勝つためには、やっぱり作法みたいなものを踏んでほしかったかなぁ…。