※月曜段階の予想ですので回避馬が含まれるケースがございます。あらかじめご了承ください。
チューリップ賞に有力馬の大半が集結する牝馬と違って、牡馬の前哨戦はバラバラ。中距離の重賞・オープンに限っても、
弥生賞、
スプリングS、
若葉S、
共同通信杯、
きさらぎ賞、
すみれS、
京成杯とあって、それぞれの1着馬だけで18頭中7頭を占めます。
でありながら、今年の
皐月賞も2勝馬は抽選なし、1勝馬にも出走の機会があります。つまりどういうことかというと、全体のレベルが高いわけではなくて、有力馬が使い分けをする傾向が強まったということです。
その結果として、近年は牡牝とも春クラシック初戦に無敗で到達する馬が出やすくなっています。無敗馬には夢がありますが、経験の浅い無敗馬には「キャリアのレパートリーが偏っている」危険性があることを認識しておくべきでしょう。
1.前走1着より前走1番人気
東京開催を含む過去10年、前走で1着だった馬は[8-3-5-46]で勝率12.9%・連対率17.7%であるのに対して、前走1番人気の馬は[7-6-6-22]で勝率17.1%・連対率31.7%と、はっきり上回っています。前走1着馬は人気を背負いやすいため、単複の回収率も107%・67%にとどまるのに対して、前走1番人気馬は121%・127%と優秀です。前哨戦はあくまで前哨戦。そこで勝負に行く馬もいれば、試走の意味合いが強い馬もいます。能力関係を推し量る指標としては、着順よりも人気の方がより正確なのではないでしょうか。
2.スピードレースの経験が必要
今年は
きさらぎ賞も
弥生賞もレースレコードでの決着となりましたが、それは両レースがいつもスローペースで行われているから。今年の両レースにしても特段びっくりするような時計ではありません。
皐月賞は距離適性が短めの馬も多く出走してペースが上がるため、良馬場ならば1分58秒台の決着が通例。これは、ここに至るまでの芝2000m路線ではけっして経験することのできない流れです。近年
弥生賞組が不振なのも、また
共同通信杯、
スプリングSという1800
ステップ馬が良績を残しているのも、ひとえにここに原因があります。つまり、
皐月賞では1800m以下のレースに対応できるようなスピードが要求されるのです。
3.多頭数競馬を捌ける脚はあるか
使い分けが徹底される傾向が強くなった近年では、前哨戦はどこも少頭数になることが普通になりました。ところが
皐月賞は当然多頭数になりますから、ここにおけるギャップがひとつの罠になります。中山開催の過去4年間の勝ち馬はいずれも、前哨戦で先行する脚を見せていました。昨年2着の
リアルスティールにしても、
スプリングSは追い込み届かなかったものの、その前走の
共同通信杯では好位で競馬をした経験があり、だから本番でも前々の競馬に移行できたわけです。つまり、
皐月賞を勝つためには、どこかで早めの競馬を試しておくのが当然の手順なのです。
リオンディーズの
弥生賞は、一気の距離延長もあって行きたがる面を見せましたが、無理に抑え込むことをせず、前に馬を置かない形で我慢する競馬を教え込みました。直線入口で早くも先頭に立つ強引な競馬になりながらタイム差無しの2着ですから、人馬ともにここに臨む上で大きな自信を得たことでしょう。マイルの朝日杯を勝ち切れるスピードの持ち主が、中距離を早めに動ける自在性を手に入れたわけですから、鬼に金棒です。キャリア3戦ながらその内容はじつに濃厚で、さすがは角居厩舎と感心するしかありません。
これを負かす可能性があるとしたら、
サトノダイヤモンドでしょう。
きさらぎ賞は平均に速いペースを積極的に追走してのもので、これもまた小回り多頭数の
皐月賞を勝つことを具体的に想定しながらの実戦シミュレーションでした。単勝120円とはいえ、もし負けたら
皐月賞出走が危なくなる状況でこれができるのですから、さすがは池江厩舎です。この馬もキャリア3戦ですが、
皐月賞に臨むにあたっての準備はすでに万端と言えます。
マカヒキもまた3戦3勝、無敗の
弥生賞馬ですが、この馬はこれまで後方からの差し競馬の経験しかありません。
若駒Sから
弥生賞というローテーションも、どちらかといえばダービー仕様に向けて緩やかにセッティングしていくためのルートで、近年のスピード
皐月賞を勝ちに行くためには準備不足の感は否めません。ただし、もちろん無敗馬ですから、展開や馬場状態が向けばまとめて差し切るだけの能力は持っているものと思われます。
エアスピネルの
弥生賞の敗戦は、ダービーまでを見据えての試走に徹しての結果だと思います。失うものがない今回は積極的な競馬も可能ですし、この馬のスピード能力は、スローの
弥生賞ではなく速いペースになる
皐月賞でこそ活きるはず。今回はハミ替えが予定されていますが、同様のケースは2000年の
エアシャカールでもありました。
弥生賞を敗れたあと、ハミ替えを進言して
皐月賞を勝たせたのが
武豊騎手。日本競馬を牽引し続けてきた名手がここぞで打つ勝負手に、ぜひご注目ください。