【王者の競馬】
アーモンドアイが、鮮やかに艶やかに2019年の
有馬記念を駆け抜ける。
全成績は[8110]、そのうちGIは6勝。3歳春、一冠の
桜花賞を一気差しで仕留め、
オークスは
ジェンティルドンナの保持するレースレコードに0秒2差の2分23秒8で楽勝、
秋華賞制覇で3歳牝馬三冠を達成。秋は初の古馬相手、牡馬混合の
ジャパンCを2分20秒6という空前のレコードで制圧した。本年春は
ドバイターフ制覇で、全世界にその存在感を発信。
安田記念はスタート後の不利に泣き3着に敗れたが、秋の天皇賞は56キロを背負い、コースレコードに0秒1差と迫る1分56秒2で圧倒。メンバー中第二位の上りで、後続に付け入るスキを与えることなく、3馬身差に封じ込めた。香港遠征は熱発で自重したが、弾けんばかりの追い切りを披露。中山2500mは初めて、雨予報など、課題も少しばかり抱えているが、ゲート番号は5枠9番枠。出遅れに気をつけ、スタンド通過時、前目の内をなだめ脚をため、4コーナー手前ではもう先頭が見える――
オルフェーヴルや
ディープインパクトに近い王者の競馬を描いているか。
逆転があれば
サートゥルナーリア。歴史的名牝を打ち負かすには確たる数字としての武器が必要、根拠となるのは二走前の
神戸新聞杯。緩ペースの上り勝負とはいえ、2400mという長丁場を走り、ラスト4F・11秒8-10秒8-10秒2-11秒3(3Fは32秒3)という、競馬史上でもめったにお目にかかれない仰天のHラップを計測した。前走の天皇賞は、
神戸新聞杯の反動も残っていたか。パドックに入ってきた瞬間、なんだかおとなしく、腰に力がないかもしれない?返し馬に入ると、一転エキサイト。前走は発馬で後手、1コーナー過ぎですぐに好位と、スミヨンだから道中上手く見せたが、ロスは相当大きかったのかもしれない。頑丈そうに見えるが実は、心身ともに幼さやひ弱さを残しており、今一度体造りや調教など見直し、
神戸新聞杯のときに近いメニューを組んできた。紐解けば、兄
エピファネイアはスミヨンとのコンビでJC圧勝歴がある。スミヨンの天皇賞のくやしさ、失敗感は、ひょっとすると相当?(笑)。ならばこその逆転劇も考えられる。
もう一頭の該当馬は
リスグラシュー。デビュー時432キロだった馬体は、
東京新聞杯を制した4歳秋は448キロへ、昨年11月の
エリザベス女王杯は、462キロにビルドアップし、念願のGI初制覇を成し遂げた。香港シリーズは、当地にあっては断然の注目の的。マークする側からマークされる側に立場が変わり、するりと勝ち星が逃げてしまったが、
宝塚記念は二番手追走から2着以下を0秒5と突き放す楽勝。2分10秒8という走破タイムは、過去十年では歴代2位。ちなみに第三位は、あの
オルフェーヴルの2分10秒9。この記録があれば、
アーモンドアイへ真っ向勝負に打っていける。
オーストラリア遠征明け、引退レースになるが、調教の質量、そして動きも、春の
宝塚記念とほぼ同様、甘えはない。
惑星は天才児
フィエールマン。
凱旋門賞は、腰が細い、緊張している。経験したことのないぬかるんだ馬場に、目を白黒させ12着に沈没したが、日本に戻れば、堂々のGI・2勝馬。
菊花賞はマラソンレースというよりは、9Fや10Fの中距離に近い。極端な瞬発力決着、ラスト3F・12秒2-10秒7-11秒3(34秒2)というレースラップを33秒9という超速ラップで一気差し。天皇賞春も、
菊花賞のおさらいのようなスローの瞬発力勝負。上り4F・11秒7-11秒6-11秒0-11秒7という、秀逸なレースラップを描いている。鞍上はここ一番に強い池添、終い勝負に徹すれば首位に肉薄もありえる。
スワーヴリチャードは、JC前から調教をコース追いから坂路へとスイッチ。コーナーが少ない坂路は腰への負担が軽くなり、チークピーシーズを装着することで、精神面の脆さも同時に解消できた。正直JCが
ピークかなと思っていたが、12日にはマーフィーを背に50秒1-36秒9-12秒2を軽々。一昨年の有馬は出遅れと14番枠に泣いたが、この枠なら違う。
ヴェロックスは、
菊花賞は断然の1番人気、他馬のマークを背負っての3着。勝ち馬
ワールドプレミアとは能力は同等。
菊花賞を好走してきた3歳馬は、無欲の先行策で、来年につながる小差のレースを演じるときがある。