【水無月の頃、新しく咲く花】本命は
サートゥルナーリア、類まれな才能が新しい花を咲かせる。
育成や2歳馬時台から、動かせば調教は桁違いに動く。いくら時計を出しても、見た目は疲れているようには映らない。そうして
皐月賞までは、
ポンポンと順調に勝ち星を積み上げた。しかし、手抜きなく走るため微妙に疲労はたまる。ダービー、そして
天皇賞(秋)と、発走直前に急激に
テンションが上がったのは、肉体が傷んでいることへの悲鳴だったのかもしれない。なんて、心身をどうコントロールしていいかわからない「ビッグベイビー」時代もあったけれど、まだ完調手前の状態でも、
神戸新聞杯はラスト4F・11秒8-10秒8-10秒2-11秒3(3Fは32秒3)という、中距離戦線における日本競馬史上屈指のラップを計測。あの
ディープインパクトもびっくりの数値を叩き出してみせた。
二走前の
有馬記念も、2着には敗れたものの、近年でも屈指のHレベル決着を2着。単なスローの上り勝負だけではなく、持久力勝負もクリアした。前回の
金鯱賞は11秒2-11秒1-11秒5(3Fは33秒8)というレースの上りを、33秒2で圧勝。最後の1Fから2F内のどこかで、軽々と10秒台のラップを馬なりで繰り出しており、天の才の証を、再び数字として示して見せた。なんて、馬体のラインは、前回とはまた微妙に違う。馬体造りの正解は何だろう、最高到達点はどこか。進化途上もまたひとつの魅力だが、ただ仕上げは手の内に入った。渋った馬場、ラ
イバルたちを、真っ向勝負で競り落とす
宝塚記念だ。
対抗一番手は
グローリーヴェイズ。GII・
日経新春杯を力でねじ伏せ、いざ挑んだ4歳春の天皇賞は、
フィエールマンとの息詰まる叩き合い。超スローの上り勝負とはいえ、ラスト4Fのラップは推定11秒7-11秒5-11秒0-11秒8を計測。3200mのマラソンレースというよりは、中距離2000m系の瞬発力決着に近い瞬発力勝負を演じており、3着以下とは6馬身。中長距離帯での立ち位置を明確に示してみせた。
ただ、450キロ台と線は細い。
京都大賞典は体調が整わず6着敗退を喫したが、
香港ヴァーズは海外へ輸送して、現地でさらにハード追い。肌艶は
ピカピカ、レースは冴えに冴え、2400m近辺のミドルディスタンスでは最強に近い世界の強豪を一閃。2分24秒7と走破タイムは歴代でも出色。日本の競馬界も驚いたが、世界の競馬シーンも仰天だ。ドバイ遠征中止などあり半年ぶりの実戦となるが、レーンを背に攻めの姿勢でハード調教もクリアできた。ちょっと前の
サトノクラウン。過去二年、香港実績のある
リスグラシューや
ワーザー(2着)が、この宝塚でも勝ち負け。梅雨時の
パワー馬場と香港実績は相通じるものが多い。
ラッキーライラックも走るたび上昇。3歳春のクラシックは結果が出せなかったが、
エリザベス女王杯は上り32秒8で快勝。
香港ヴァーズ2着後も、
中山記念をひと叩き。
大阪杯はデビューから40キロ増の520キロにバンプアップ、牡馬混合GIをなで斬り。さらに研磨を重ね、中間の
シルエットは牡馬と見間違うかの重量感を手に入れている。
ひとつ年下の4歳牝馬
クロノジェネシスも、
秋華賞を奪取、GII・
京都記念は重馬場条件下で牡馬を一蹴。
大阪杯はスローの外枠。道中外々を回ったぶん、最後クビ差振り切られたが、エリザベスで水を開けられた
ラッキーライラックの背中は確実に近くなった。4歳馬ならではの伸びしろも見込める。
ブラストワンピースも決して軽くは扱えない。
大阪杯はコーナー4つ、タイトな内回り。ペースはスロー、道中内に押し込められ、外に出すのに精いっぱいだったが、外回り2200mなら話は別。稍重の
グランプリ・
有馬記念をロングスパートで制し、洋芝の
札幌記念はイン強襲。
AJCCのレース内容など見ると、少し時計のかかる馬場は
ドンピシャ。暮れの
パワー馬場
有馬記念を制した
グランプリホースは、もうひとつの
グランプリ・
宝塚記念でのリピーター多し。
キセキの先行力も連下に
リスペクト。肉体は決して摩耗していない。制御不能となる心のトゲは何なのか。道中どこかで動きたがる癖に悩んでいるが、引き込み線からスタートする阪神2200mは、スタンド前の距離も長く、
キセキの思う通りのリズムに任せ、1コーナーでは先頭に立てる。向こう正面で折り合い、ピッチを少し落とせるか。そこさえクリアできればきわどい首位争いに持ち込める。