【勝ち方と時計を問う】
ハープスターは、3世代牝馬の文句なしの中心星。2冠の
オークスは、勝ち方と時計を問いたい。起点となったのは
新潟2歳S、上がり32秒5の直線一気。テレビ画面を突き破ってしまいそうな、勲章ともいうべき破壊力を誇示して見せた。2着に取りこぼしたものの、阪神JF・1分33秒9という決着タイムは、あの
ウオッカのレースレコードに次ぐ、近5年の最高記録。
チューリップ賞・1分34秒2も
ウオッカに次ぐ歴代2位。
桜花賞に至る前哨戦でも、歴史的名牝たちと肩を並べる数値を叩きだしてきたが、その
桜花賞は単勝1・2倍の断然の1番人気。背負った荷物は重かったろうが、走破タイムは1分33秒3のレースレコード・タイ、上がりは32秒9。記録はもちろん。従来の
桜花賞の風景をも塗り替えてみせた。さすがにあれだけの脚をつかってしまうと、馬体に影響を及ぼすかもしれない――そこに競馬の怖さもあるけれど、前走後さらに皮膚が薄くなり、馬体が張ってきたのには舌をまく。なるほど
ハープスターという馬は、こういう「芯」もしっかり整った馬なのだ。確かに体型はマイラー。終い一手ゆえ、展開に泣くかもしれないという死角もある。負けるとすれば、その二点が敗因となるだろう。しかし、
桜花賞の時計、上がり32秒9という数字は絶対的能力。3歳春なら2400mでも守備範囲。ミドルラップでレースが流れ、直線半ば気分よく馬なりで中団に取りつけば、
ジェンティルドンナの2分23秒6という不滅の
オークスレコードに近いところまで時計は接近。気は早いが、なんたって秋は
凱旋門賞――そのくらいのパフォーマンスを期待していい。
対抗一番手は
サングレアル。前走の
フローラSは前半1000mが1分0秒7のスロー。スタートでいくぶん出遅れ、道中は後方5番手あたりのインを追走。直線入り口あたりではテレビ画面からも取り残され、勝負あったかに思えたが、わずか200mでグイグイ。なるほど、あの
ブエナビスタの妹なのだ。ちなみに
フローラSの2分0秒0は、過去十年では最速。歴代トップの
サンテミリオン(2分0秒2)は、
アパパネと
オークス1着をわけあっている。木曜日発表の体重は前回と同じ414キロ。稽古はひと通り消化できていても、中2週で二どの関東遠征となると、数字からは読み切れない、目に見えない疲れもあるかもしれない。でも、競争馬は、まずは能力がありき。血統も含め、
フローラSの2分0秒0は、第一に
リスペクトしたい。
バウンスシャッセは、1月の
寒竹賞を2分0秒8で走破。前日の
中山金杯は2分0秒1、
京成杯は2分1秒1。
オークスにつながる中距離ベースでの時計レベルを早々に獲得。牡馬混合の
皐月賞は勝負どころで早々に手が動いてしまったが、牡馬と見間違うかの堂々たる腹構え。頭一つ背丈の高い510キロ台の体躯通り、時計のかかる
フラワーCの芝も力でねじ伏せ圧勝劇。元々は道悪競馬を得意としているパワー血統でもある。
ヌーヴォレコルトは、
桜花賞はギリギリまで追い出しを待ち、馬群を割って0秒1差の3着入線。粘り強く末脚の生かしどころを考えレースの組み立てを構築してきた。何かこの中間の意欲的な調教を見ると、あとひと化け、岩田のワンプッシュがあるかもしれない。
パシフィックギャルも、最終・最大目標の
オークスを待っていた。父は
ゼンノロブロイ、490キロ前後の脚先も背中も長い、持久力に秀でたミドル
ディスタントホース。こうした底力型は賞金加算が微妙、
オークスまでが遠く、マイル戦が主体の3歳春までの番組チョイスに苦心はしたが、アスター賞の速い上がりにも2着と対応。
芙蓉Sも3着に粘り込み、
アルテミスS2着、
フラワーC2着で賞金を加算。鞍上にはウィ
リアムズ、チークピーシーズを装着。様々な下準備を整えてきた。
距離延長が微妙だが、
ブランネージュは
フローラSで、
サングレアルとアタマ差の2着。連下には押さえておきたい。