【後先なし】
キタサンブラックが有終の美を飾る。全成績は[11242]、そのうち6つの勝ち星がGI。2000mの
大阪杯、
天皇賞(秋)で中距離王となり、昨年は2400mの
ジャパンC優勝、そして2017年は3200mの
天皇賞(春)のレコ勝ち。幅広いバンドで、密度の濃い競走時代を送ってきた。本年後半は
有馬記念を逆算する形で、秋3戦のローテを表明。不良馬場の天皇賞は力でねじ伏せた。
しかしJCは、小さくとも反動がくる。体重表記はプラスマイナスゼロだったが、どこか造りが水っぽいというか。皮膚が厚く映り、パドックの歩様の力強さも天皇賞のほうが大地をしっかりつかめていたように思う。ただ、返し馬の捌きはさすがGI馬。王者として覚悟の逃げは打て、残り4F標識から11秒8とピッチを上げ粘り込みをはかったが、ラスト3Fのレースラップは11秒3-11秒8-12秒0。このラスト1F・12秒0こそが、キタサンの唯一の弱点。最後の最後になって、11秒そこそこの切れ勝負、瞬発力勝負に後れを取ってしまった。
しかし、引退レースに向け今度の造りは後先なし。先週13日のCW7F追いはもちろんだが、16日の土曜日、6F追いの懸命さを見ても、いかに渾身の仕上げで挑むかがわかる。中山の2500mは、知られているようにコーナーは6つ。そのコーナーごと、ラ
イバルたちのスタミナと瞬発力を削ぎ自在に進めることができる、本来はキタサン向きの回り舞台ともいえる。
逆転があれば3歳馬
スワーヴリチャード。次代のベルトやタスキを受け継ぐ者の使命は、最強チャンピオンを
ノックアウトすることにある。
アルゼンチン共和国杯の決着タイムは2分30秒0、後半1000mはほとんど11秒台というHレベル決着だった。参考比較までに挙げるなら、2400mの通過タイムは2分24秒0、JCの優勝タイムは2分23秒7。JCは残り4Fから11秒台へ突入、レースのタフさと質は五分以上の扱いでいい。
東京2500mを2分30秒台で勝ち上がったアルゼンチン優勝馬の中には、過去十年では
アドマイヤジュピタが天皇賞春を制覇、
スクリーンヒーローが次走のJC。2分30秒0で駆けた
トーセンジョーダンは、
天皇賞・秋をレースレコードで痛撃。ほぼ例外なくGIタイトルを手にしている。春は追い切りでも右回りは内にモタれる仕草を見せていたが、秋は腰も充実、M・デムーロなら大丈夫。戦法も目標はキタサン一頭と構えはシンプル――枠は外目の14番。道中手ごたえに自信ありとあれば、どこかで一度、キタサンに並びかけ、キタサンに脚を使わせることもできる。
シュヴァルグランは、JCはパドックでは小さく映るくらい、実は地味に見えた。無駄のない研ぎ澄まされた造りは、そう感じるものなのだなぁとも思うが、余分な脂肪を削ぎ落したことで、追い求めていた俊敏さが前面に。もちろんJCは、枠順、位置取り、追い出しのタイミングがピタリとハマったことも確か。前走のレース運びをなぞるだけでいい。スタンド前を通過する時に、キタサンの背後に、しかも内目につけられるか、ここで競馬が決まる。
有馬記念コースは下手に強気に動くと坂上で伸びない。
伏兵は直線強襲策に徹しきった追い込み型、
レインボーラインと
ミッキークイーンに注目。
サトノクラウンも、ムーア騎乗とあれば、やっぱり外せない。