【最終章】5歳晩秋、
アーモンドアイはラストランでも輝く。積み上げてきたGIタイトルは、3歳牝馬クラシック三冠など、あわせて8つ。
ドバイターフも含めると、うち6つが左回り、5つが東京だった。紐解けば
オークスの走破時計は2分23秒8、JCは2分20秒6の大レコード。2019年の
天皇賞(秋)は1分56秒2。5歳となった本年、
ヴィクトリアマイルCを1分30秒6・上り32秒9という1600mの自己最高記録で駈け、秋の天皇賞を二連覇。スローペースで展開したぶん、前年より走破タイムは1秒以上遅かったが、上り4Fめから11秒7にギアを上げ、続く3Fのレースラップは10秒9-11秒1-11秒6(3Fは33秒6)、対する自身の上りは33秒1。上りラップの数値は前年より0秒7速く、記録内容に加齢や衰えはほぼ見当たらない(むしろ前走の天皇賞は、激しく2着に詰め寄ってきた
フィエールマンの能力をほめてあげたい。見せ場を作った
クロノジェネシスの才能を、以降のレースで検証すればいい)。
一連の超Hレベルの時計の列挙を思えば
アーモンドアイの輝きは東京でこそ。ラストランに備えチーム一丸となり体調整備を熟考。木曜発表の体重は496キロ、輸送減を考慮すればベストに近い。枠は2番、荒れたインを避け、ジワリと外へ、いかに導くか。ルメールJの技術と度胸に9冠を託す。
対抗は
コントレイル。東京スポーツ杯・1分44秒5という驚異のレコードこそが、天賦の才能の証、
アーモンドアイ逆転の一番の根拠になりうる。あふれんばかりの才能とスピード値は、牡馬クラシック三冠を戦っていく中では逆に、東スポ杯以上の数値を走破タイムやラップで出すことはなかったが、
皐月賞を一気差し。ダービーは好位から横綱相撲で寄り切り。
菊花賞は息の詰まるようなプレッシャーを跳ね返し、クビ差ながらも3000mを乗り切った。三冠の中身は、思った以上に密度が濃い。その激闘の疲れははたして癒えたか。見た目だけではわからない部分は確かにあるけれど、才能には才能。東スポ杯以上のギアを、まだ隠し持っている(かもしれない)。枠は5番、すぐ内にラ
イバルの
アーモンドアイがいる。
無敗の牝馬三冠馬
デアリングタクトも、能力の原点は
エルフィンS・1分33秒6・上り34秒0にあり。
アーモンドアイの
桜花賞前より、記録レベルは同等かそれ以上だった。
桜花賞はあいにくの大雨、泥んこの不良馬場。しかし、力の違いを見せつけるかのような外強襲。
オークスは狭い密集馬群をあっという間にこじ開けた。2分24秒4はダービーと0秒3差。道中のペースやスパートした地点に違いはあるものの、
デアリングタクトの上り3Fは33秒1、ダービーの
コントレイルの34秒0。一瞬の脚は
デアリングに凱歌が上がる。
秋華賞は
オークス以来のぶっつけ、3-4コーナーで厳しい圧を受け、被されるワケにはいかず早めに動き。手前がかわらず一瞬ヒヤリとさせられたが、ゴール前はフットワークは滑らかになった。ひと叩きして、脂肪分も抜けガス抜きも完了。
アーモンドアイも
ジェンティルドンナも、過去JCをしのぎ切った3歳牝馬たちがそうだったように、53キロという斤量も比較上有利になる。
この3強の壁を唯一こじ開けられるのは
グローリーヴェイズだろうか。本格化は4歳春、
日経新春杯を制し、春の天皇賞は
フィエールマンとの息詰まる叩き合いを演じた。超スローの上り勝負とはいえ、ラスト4Fのラップは推定11秒7-11秒5-11秒0-11秒8を計測。3200mのマラソンレースというよりは、中距離2000m系の瞬発力決着に近い瞬発力勝負を演じており、3着以下とは6馬身。中長距離帯での立ち位置を明確に示してみせた。
京都大賞典は体調が整わず6着敗退を喫したが、
香港ヴァーズでは、2400mという分野における当時世界最強馬たちを並ぶ間もなく一閃。2分24秒7と走破タイムは香港史上出色、日本の競馬界も驚いたが、世界の競馬シーンも仰天した。
京都大賞典を快勝し、これまでの中でも最高に近いコンディションで出走。左回りの新潟2000mに1分56秒6という優良戦績があり、東京替わりもマイナス材料にはならない。
カレンブーケドールは、
秋華賞、
京都記念で
クロノジェネシスの2着、昨年のJCも2着など、当代の超A級馬を相手に小差の接戦を演じてきた。3頭まとめて負かすのはさすがに少し荷が重いけれど、休み明けをひと叩き。相手が強ければ強いほど燃える。往年のスピード指数は計測できなくなったが、
キセキも体調はいい。