【本領発揮】
シュネルマイスターが、マイルを舞台に本領発揮。父は快速
キングマン、大きなフレーム、低い重心。胸前厚く、臀部はまるまる。ズシリと太く重い首が据わった極上のマイラー。
札幌・芝1500mの新馬戦の走破タイムは1分30秒5。一見平凡に映るが、洋芝で上り3F・推定11秒9-11秒1-11秒7(34秒7)という快ラップを計測。距離は異なり、レースのタフさも違うが、
エフフォーリアの札幌2000mの上りは推定12秒4-11秒5-11秒7(35秒7)。函館の洋芝1800m・
ソダシの新馬の上りは12秒0-11秒7-11秒6(35秒3)だった。あの二頭と並べてみると、高水準のラップを密かに初陣から叩き出していたことがわかる。
二戦目の
ひいらぎ賞は14キロ増量。1000m通過・59秒9のミドルを、じっくり中団待機。勝負どころの三分三厘、密集馬群に度胸よく突っ込み、芸術的なラインを描き、一瞬にしてワープ。坂下からさらに回転数を上げ、12秒4-11秒7-11秒8(3Fは35秒9)というレースラップを、35秒4という加速ラップで圧倒。
12月の中山開催は3週目から急に時計がかかり始め(一週前とは馬場差1秒)、1分35秒8という時計的価値を上手く説明はできないけれど、翌日の古馬2勝クラスよりは0秒1速く、2歳暮れの時点で古馬2勝と同レベルで走る馬は、ごく普通にOPもしくは重賞の一つは勝てる。
弥生賞チャレンジは、2000mに対応できれば儲けもの。
皐月賞へと進んでも、そこで距離の壁ができればNHKマイルに戻ってもいい。「お試し」的感じのチャレンジだったが、ルメールJも距離を慮りおっかなびっくり。坂上からの止まり方をみると、やっぱり1F長かった。
ただ、典型的なスローの上り勝負とはいえ、上り3Fのレースラップは11秒6-11秒0-11秒9(34秒5)。ラスト2Fめの11秒0という好数値が、勝者
タイトルホルダーが
皐月賞2着に粘った根拠にもなった。
もとより春の最終目標は、早くから
NHKマイルCにと定め、一週前の南Wは5F・63秒7の猛時計をマーク。本追い切りでは緩さも解消、馬体のラインがくっきり浮かび上がり、最終追い切りは手綱を動かさずとも滑らかに加速。仕草にもGI仕様の緊張感が出てきた。
対抗は
グレナディアガーズ。父は
フランケル、母は北米7勝(BCフィリー&メアス
プリント勝ち)。勝ち上がりに3戦を要し、少し回り道もしたが、
朝日杯FSを1分32秒3でレコ勝ち。理想像と結果ががっちりと噛み合った瞬間だった。
改めて
朝日杯FSの内容を精査すると、スタートして2・3Fに10秒4-10秒8というHピッチが登場。4F以降も11秒台のラップが続き、1000m通過は56秒9-1200m通過は1分8秒5という、よどみのないHペースで展開。
ただその一走前の阪神1400mで57秒4-1分8秒8という流れを体感。そのぶんハードな急流にも、好位の外目でバインドはガッチリ。上り3Fのレースラップは11秒6-11秒8-12秒0(35秒4)、対する自身の上りは34秒5。2F標識を過ぎ先頭に立ち、後続馬を4分の3馬身差封じて見せた。
ファルコンSは、本番を見据えての仕上げ。
朝日杯FSと比べると、体重は同じでも脂肪が薄っすら体を覆い、パドックも窮屈にコセコセ歩き真っすぐ歩けない。他より重い57キロを背負っていた影響もあったか。少し反応も遅れ、ブレながら走っていたが、一週前の本馬場の追い切りは飛ぶよう。直前も残り1Fから独特のピッチ走法で四肢が鋭く回転。思えばサイズは450キロと、今の競馬シーン--特に巨漢馬が揃うス
プリント界においては小柄、牝馬のようにデリケートで細身。ギリギリの仕上げは現状数回に一回しかできない。
割って入れば
ルークズネスト。二走前の
シンザン記念は、一線級相手のマイルはどうか。折り合いなど確かめながら、慎重に運んだぶん2着。次走の
ファルコンSは鍛えながら10キロ増(510キロ)。おお、父
モーリスに似た、分厚いタンク型のス
プリンター体型になったなぁ。
ダッシュは鈍いくらいだが、1番枠だと包まれてしまう。ある程度出して行くとは言っていたが、前進気勢に任せ、前半3Fは12秒2-10秒6-10秒9(33秒7)。1000mは56秒2のHペースで通過。
しかし、ムキになって先頭を切っているワケではなく、残り2F標識まで追い出しのアクションを控える余裕あり。相手は
グレナディアガーズとみて、あえて外に併せに動き、1キロ斤量有利とはいえ叩き合いをアタマ差制した。
上り3Fは35秒0を要したものの、良馬場発表ながら芝の塊が飛ぶ荒れ馬場、そのうえで1分20秒1は
ファルコンSのレコード。1F延長のGIマイルにも耐えうるラップ構成といっていい。前肢を高く上げるフォームも、加速してからの前脚の運びが低く大きくなっている。
惑星は
バスラットレオン。大一番に向け、理想とする心身を造りあげた。本命馬
シュネルマイスターの札幌の新馬の上りラップについて冒頭で触れたが、
バスラットレオンの札幌・芝1800mの上りは、なんと11秒4-11秒0-11秒6(33秒6)。超ド級の高速ラップを示していた。
札幌2歳S本命の根拠はそこ(しかし道中暴走、結果は3着)。
朝日杯FSも終始自分と喧嘩(4着)。肉体やスピードを持て余しながら、重賞の最前線で戦ってきた。
しかし、ニュージーランドTは1000m通過・58秒5というペースも先頭ですいすい。つかまっているだけの馬なりで、上り3F・11秒7-11秒2-11秒7でパンチアウト。後続とは5馬身、走破タイムは1分33秒1。
朝日杯FS時から着実に進化した姿を披露。調教のアクションにも気負いがなくなり、パドックの歩きも、のんびりすぎるくらいドッシリ。今なら逃げなくても、きっとレースは作れる。
大駆けがあれば
ソングライン。
桜花賞は目つきが妙に怪しい、なぜかしっぽを振っている。もしかしてフケ?16番枠で出遅れ。行くか控えるか。呼吸の合わないまま道中ガチャガチャ、最後はフォームがバラバラになってしまった。
しかし、11月の東京マイル戦は、1000m通過・58秒9という、よどみのない平均ペースを、ひと呼吸追い出しを待ち、11秒7-11秒9-11秒6(3Fは35秒2)というレースラップを、34秒1で大外強襲。物見をしながらでも楽に加速ラップが繰り出せた。1分34秒1という走破タイムは、同日の
赤松賞、GIII
アルテミスSよりも速く、東京開催の2歳戦ではNo.1といっていい好内容だった。
二走前の
紅梅Sも0秒5差の楽勝、走破タイムは1分20秒6。ちなみに同じ開催の
シンザン記念の1400m通過タイムは1分21秒3だった。左回りの東京なら面白い。
ホウオウアマゾンは、レコード決着となったデイリー杯を、1分32秒4で同タイム2着した実力馬。
朝日杯FSは9着に失速したが、他より多めのキャリアと、高速馬場を駈けたツケがたまったか?
レース後、跛行が判明したが、4か月間隔をあけ、
アーリントンCは造り直し。完璧ではないが毛艶は一変。好位で呼吸を整え出方を探り、追い出し遅れがないよう檄を飛ばし、11秒5-11秒2-12秒3(3Fは35秒0)というレースラップを、34秒8で競り落とした。後続には1馬身余、GIで3番人気に支持された資質のほどを着差で示した。