【度胸】
エフフォーリアはダイナ
ミック。東京2400mの、ダービーの風景がよく似合う。デビュー戦は札幌の芝2000m、500キロ余の巨体を揺らし、
パワーを要する洋芝を11秒台の連続ラップをマークした。ところを高速馬場の東京競馬場にかえ、
百日草特別完勝に続き、
共同通信杯は折り合いと動き出し、瞬発力の在処を検証。1000m通過は61秒9のスロー、好位の外でしっかりとバインド。ラスト4F標識すぎから11秒9へと速度アップ。続く3F・11秒5-10秒8-11秒5(33秒8)という上りを、自身33秒4という高速ラップで一閃。持久力と瞬発力を記録として同時に示した。
皐月賞はコーナー4つの右回り、馬場は稍重。好位のポケットに素早くおさまり、1000m通過は60秒3。数字とすれば平均ながら、却って内外から圧を受ける、跨っている騎手にとっては、口がカラカラに乾きそうになる厳しい道中だったか。しかし切れと
パワーの両方を兼ねた二刀流。直線入り口荒れた内が開くのを素早く予測。大胆に瞬時にインに切り替え、中山の急坂を驀進。コースは異なるものの、
皐月賞の3馬身という着差は2011年の
オルフェーヴル以来(東京・2000m)。上り36秒7はメンバー中第二位、東京2400mに所を移しても、
皐月賞組の逆転はまず考えにくい。
父
エピファネイアはJC圧勝、母の
父ハーツクライは、5歳暮れの
有馬記念で
ディープインパクトを撃破した成長力でも知られるミドルディスタンスホース。過去4戦に比べるとローテーションはタイトだが、調教タイム、本数、併せ馬も手順通り。木曜日発表の体重は514キロ(
皐月賞は504キロ)、すべてが青写真通りに進んでいる。枠は絶好の1番、
皐月賞の流れそのまま、好位抜け出しでも十分勝算は立つ。ただ、安全策を意識するあまり、つい早仕掛けになると思わぬ落とし穴がある。
共同通信杯の時より気持ち追い出しを遅らせるくらいの度胸と構えを意識、ならばダービーは、
タケシ君、ハイ。
本命が勝ちに逸れば、
サトノレイナスがG前急襲。2着に惜敗したものの、
桜花賞の1分31秒1の大レコードは、同じ世代の牡馬たちが誰も出しえなかったHレベルのレコード。先週の
ソダシは先行争いに巻き込まれ8着に埋没したが、レースの組み立ても脚質も
ソダシとはまったく異なる。レイナスは
父ディープインパクト譲りの強靭な末脚が身上。
桜はレースの上りが34秒3に対し、自身のソレは32秒9。過去4戦を見ると、勝負どころ手前まではルメールJが促しても動こうとしない。がむしゃらに末脚を繰り出すのではなく、秩序よく自分のリズムで進み、残り3F地点でカチリと自分でギアを入れる。噛み合えば一段二段、ゴール板に向けエンジンが急激に回転を始める。トップスピードにのった時の数値は、
エフフォーリアより上。ゴール前100m、本命の姿が視界に入れば逆転のシーンも考えられる。ちなみに国枝厩舎は普段調教でも用心のため
シャドーロールを装着することが多いが、レイナスはそれすら不要、万事動じることがない(直前はメンコをつけ前進気勢を抑えていた。実戦では
シャドーロールは装着するが)。
桜花賞は大外枠から2着へ誘導、16番枠は試練とはならない。
発馬、折り合い、多頭数、幼さなど怖い課題を数点抱えているが、
毎日杯2着馬
グレートマジシャンも、同じ
ディープインパクト産駒。
エフフォーリアの能力のベースが
共同通信杯とするなら、こちらは同開催の
セントポーリア賞・1分46秒5がダービー馬たるストロングポイントとなる。小頭数のスロー、典型的な直線の上り勝負とはいえ、直線半ば馬なりのまま自然に回転力が増し速力はアップ、11秒6-11秒2-11秒1(3Fは33秒9)というレースの上りを、33秒3で颯爽と加速(ラスト2Fは推定10秒8前後)。レース形態は異なるものの、
共同通信杯の
エフフォーリアの上りは33秒4、時計は1分47秒6。甲乙つけがたい能力を備えていることが横比較でもわかる。
毎日杯は輸送による馬体減。道中何度か頭を上げ折り合いを欠き、内外のコース取りの差で2着に敗れたが、1分43秒9は日本レコードタイ記録で走破。数字的根拠を、ここでも示している。幼いなりに心身は一段階成長。減っていた馬体も木曜発表は482キロ(+8キロ)、ダイナ
ミックなアクションは東京でこそだろう。
毎日杯優勝
シャフリヤールも、緩かった馬体がキリリと締まり、鉄紺色の鋼の筋肉を持つサラブレッドへさらに進化。個人的には2000mベストの体型に思えるが、ダービージョッキー・福永Jの技量なら金星へと導く可能性もありえる。
グラティアスのロングスパートにも注意は怠りなく。半姉
レシステンシアの父は
ダイワメジャー。父が
ハーツクライにかわり、毛色は黒っぽい鹿毛になり、ひと回り四肢も背中も長い500キロ前後の中距離体型に変身。瞳は鋭く、歩きは大きく闊達、闘志は満々。
京成杯は1000m通過・63秒7の超スローにも、好位のポケットでお行儀よく我慢。走法はパワフル、直線入り口他馬が嫌う荒れた内ラチ沿いにズボリと進路を定め、ラスト4F・11秒9-11秒9-11秒3-12秒0(3Fは35秒2)というレースの上りに対し、自身のソレは34秒9。上り4Fをすべて11秒台でまとめている。
皐月賞は15番ゲート、出遅れ、勝負どころで他馬と接触するなど、アク
シデントがいくつも重なったが、パートナーは丁寧と根気、技量の伸長度では日本人では一番ともいえる松山J。前進はあっても後退は考えにくい。
記録通りなら
レッドジェネシスも一考の余地あり。
京都新聞杯は1000m通過は59秒9のミドル。残り1000m地点から11秒4-11秒5-11秒5というHラップが続き、展開は前崩れ。流れに引っ張られて出たタイムとはいえ、2分11秒2は
リスペクトに値する。
リスペクトといえば
皐月賞2着の
タイトルホルダー。走っても結果を残してもなぜか人気は薄いが、中間の追い切りを見ると、持ち前の速さに加え、重心低く迫力も加わった。みんなもそうだろうが、俺だって進化している。