【第二章】
コントレイルの競馬史・第二章が幕を開ける。
2歳秋の東京スポーツ杯は、従来の記録を1秒4上回る、鮮烈な1分44秒5のレコードで駈けた。
皐月賞は豪快に外一気。ダービーは緻密に好位から運び2着以下を0秒5差に完封。
菊花賞は
アリストテレスの執念のマークを跳ね返し無敗の三冠を達成した。
新世代の旗手としての矜持を掲げ、次走は
ジャパンC挑戦を早々に宣言。しかし
菊花賞の激闘は思った以上に影響が大きく、マイナス2キロという数字以上に身体が薄くなり、後肢の筋肉は削げ落ち、パドックの完歩は小さく硬くなっていた。
並みの馬なら、あの体では能力通りには走れない。しかし、
皐月賞・ダービーの動きまではいかないが、返し馬のフットワークは大きく俊敏。これならなんとか持つと思えたが、鞍上の福永Jも、今日のデキでは真っ向勝負は危険すぎる。無理にポジションをとりに動かなかったが、幸いにも1000m通過は57秒9の激流。マイル通過は1分33秒1-2000m通過は1分57秒5(天皇賞より0秒3速かった)、ラスト2F目のレースラップ・13秒2という数字が示すように、残り2F標識でレース風景一変。好位から楽々と抜け出した
アーモンドアイは別格として、あの造りでも最速の上りをマーク。2着争いは僅差となったものの、他とは脚色が違っていた。
2-3歳時は馬体の摩耗のないよう、天分の才能を維持する調教に終始してきたが、2021年緒戦は
大阪杯と決め、成長を促し木曜日発表の体重は20キロ増の476キロ。一週間前追い切りはCWで6F・78秒7という猛時計を叩き出し、4歳春は攻めの調教が可能になった。
能力で3000mの菊ももぎとったが、振り返って東スポ杯のレコ勝ち。圧倒的な加速力で突き刺した
皐月賞を思えばベストは2000m前後。走るたびスタートセンスもアップ、すぐに好位にも進める。3歳三冠はもまれないよう神経を使ったが、体に幅を増した今なら少しくらい当てられても踏ん張りがきき、ディープ産駒には天敵ともいえる重馬場も、能力そのもので押し切れる。
第一本線は
グランアレグリア。
桜花賞を1分32秒7のレコードで快勝したスピードスター。2-3歳春は
テンションが上がりやすく、
朝日杯FSでは3着、
NHKマイルCでは着外に沈んだが、暮れの
阪神Cを境に心身ともに急成長。
2020年の
安田記念は、ひとつ年上の
桜花賞馬
アーモンドアイを0秒4差に完封。6Fの
スプリンターズSも力で圧倒。
マイルCSはラ
イバルたちのプレッシャーを巧みにかわし、脚色を確かめつつの余裕のゴール。東京マイルを稍重条件下で1分31秒6、最速の上り33秒7で駈けられるのなら、コーナー4つの阪神2000mも守備範囲になる。
割って入れば
サリオス。
コントレイルという大きな才能の前に、
皐月賞は0秒1差、ダービーは0秒5差を広げられたが、体型のベースはマイラー。
サウジアラビアRC・1分32秒7のレコ勝ちと、
朝日杯FSの快勝が将来の設計図であり進むべき道を示唆している。しかし馬体は明らかに完成途上。得心する造りをまだ見ていないような気がする。それでも
毎日王冠は鞍上の指示に滑らかに反応、加速状態に入ったときのグリップ力は、春よりは一段確かになった。
マイルCSは、腰回りに若干不安が発生。元々右トモに弱点を抱えており、体調ひと息の時は背中と腰が離れてアン
バランスに映るが、突貫工事で身体を造ったものの、ダッシュがつかずレースの流れについていけなかった。ただ、ゴール前の脚色はさすが。一週前は松山Jを背に出色の回転力で動き軽快。
グランアレグリアが思わぬ折り合いや距離の壁に泣けば、代わって
コントレイルに肉薄。
牡馬混合のGIのメンバーに入ると、
レイパパレはやっぱり華奢。ただキャリアを積めばGIでも勝ち負け必至の逸材。紐解けば、デビュー戦の体重は416キロ。クラシックとは距離をとり、成長を促し、二勝目は436キロに増量。続く
糸魚川特別は、後半4F・11秒9-11秒3-10秒8-11秒3(3Fは33秒4)というレースラップを、自身33秒2で内一気。ゴール過ぎても前進気勢は衰えず、瞬発力と持久力の両方を保持していることがわかった。出走がかなえば、
秋華賞の印は対抗。もしかして
デアリングタクト逆転まであるんじゃなかろうかと思っていたが、無念の抽選漏れ…。だが、
大原Sは想定通りの大楽勝。1分46秒3というタイムも、馬場差を差し引きすれば出色。1F延長の
チャレンジCも、スローの上り勝負とはいえ、ラスト4Fのレースラップは11秒4-11秒1-11秒4-11秒9。2000mにも楽々と対応、中間の稽古や立ち居振る舞いを見ると、身体に芯ができつつある。
連穴は
アドマイヤビルゴ。3歳春の
若葉Sは1分58秒6・上り33秒6。開催日時は異なるものの、
大阪杯とわずか0秒2差の快記録を叩き出した好素材。身体は小さく、無理に進めると
バランスを崩す。
日経新春杯は二番人気の
ヴェロックスに終始圧をかけられ、ラチ沿いを窮屈に回らされたが、ここはノープレッシャー。中間CWの6F追いの本数を増やし、密かに
バージョンアップを果たしている。