【図式を確認】サラブレッド、まずは血統という設計図ありき。父と母、そして兄姉。それに連なる母系や近親。その組み合わせと順列を図面にし、どんな建物になるかを、縄張りしながら頭に描いていくものだが、皐月・ダービーを連覇した
オルフェーヴルは、全兄
ドリームジャーニーの設計図を漸次塗り替えたてきた逸材。その起点となったのが、今春の
スプリングS。4コーナーから直線入り口かけ、押し上げて行く時の、波頭岩をも砕く迫力、そして1分46秒4(上がり34秒3)。
皐月賞を勝つ馬というのは、いつの時代も
弥生賞か
スプリングSの
トライアルで、何かしら、見る者を陶然とさせる、その一瞬を脳裏に焼き付ける競馬を示してくれるが、
皐月賞は3馬身差の楽勝。走破タイムは2分0秒6。何十年振りかの東京開催の
皐月賞ゆえ、時計の在り処が見え辛く、しかも当日は大粒の雨も落ちる日和雨。芝目は長く、びっしりと密に生えそろい、時折り吹きわたる風に、ザハザハと渦を巻く
パワー馬場を思えば、時計にも意味がある。もちろん、11秒8―11秒7―11秒8(3Fは35秒3)というレースラップを1秒1上回る、メンバー中最速の34秒2。数字も見た目も、他馬とは一線を画す3馬身差の楽勝だった。近年のクラシックは、記録を整合する形で、
皐月賞上位馬は、そのままダービーへ。東京の2000mを勝ち上がっての2400mのダービーは、当然ながら繋がりはより密だ。競馬のスケールの大きさそのまま、次走の威力となり、不良馬場のダービー完勝へと結びついていくのだが、秋となって
神戸新聞杯。あの
スプリングSに似た、才能のほとばしりを、再び
神戸新聞杯で確認したい。なんて、ダービーは、各馬各人、いろんな夢を見る。直線、
ナカヤマナイト、
サダムパテックに内外と寄られ、一瞬行き場を失った
オルフェーヴルを前に、
ウインバリアシオンのアンカツは、何を思ったか。残り1Fで前をこじ開けてた
オルフェーヴルだが、普通の馬ならば、もう脚はない。馬体を並べた際のアンカツは、「よし、勝った」――勝利を確信して、軽い眩暈さえ感じたかもしれない(まさか差し返してくるとは。2着に負けたことに逆に眩暈?)。ま、後続とは決定的ともいえる7馬身。懸案材料の爪も、今秋は良好という。一週前にCWでタフな7F追いも敢行。乗り出しも、わずかに
オルフェーヴルより早い。今一度、追い比べに持ち込み、差はいかほどのものかを、いざ確認。春シーズンの勢力図に割って入るとすれば、
ラジオNIKKEI賞馬
フレールジャック。本質は1800メートルを基軸とした中距離馬のように思うが、3歳7月に、中山の急坂を上がり34秒4・1分46秒9という前回時計は相当質が高い。ちなみに、追い切りは、カッとさせないよう、動かない、動かせない。あまり数字にはこだわらないほうがいい。
ダノンミルの、
若葉S・1分59秒1という記録を、惑星に再考。時計や記録は、単なる数字ではあるけれど、時に説得力をもって、馬券として貢献してくれるもんです。
ショウナンマイティも、
ポプラSを見ると、中距離重賞の一つはいける馬だ。
スマートロビンの前走・2分41秒5は、上がり馬としての水準には達している。ただ、相手はどうか。才能という壁は、意外に高く厳しいかもしれないなぁ…。