【決心を託す】2021年の
天皇賞(秋)は、3-5歳世代屈指の「三強」が、鎬を削る超Hハイレベルの頂上決戦。どの馬を選んでもきっと予想は正解、一人一人の決心の在り方を結果に託す一戦となる。丹下日出夫の本命、一番手は
コントレイル。能力の起点は2歳11月の東京スポーツ杯2歳S――東京1800mを1分44秒5の2歳レコードで圧倒(上りは33秒1、後続には0秒8差)、デビュー二戦目で当年の古馬GII・
毎日王冠と0秒1差という衝撃の快記録を叩き出した。
中山の
皐月賞は外強襲、ダービーは好位で折り合い、直線抜け出してからはほとんど追うところなく楽勝。
菊花賞は3000mの距離に難渋、首差の辛勝ながらなんとか無敗で三冠達成を遂げた。次走は
ジャパンC、その心意気やよし。無敗の三冠というタイトルを誇りに、
ジャパンCへと挑んだが、ただ菊の反動と疲労は明らか。馬体は萎み歩様は小さく頼りなく、高い能力と丁寧な騎乗でなんとか2着は確保したのだが…。
飛躍を期して挑んだ本年春の
大阪杯は土砂降りの雨。重馬場という敵は誰よりも手強かった。体重も後の
宝塚記念や海外遠征など想定し、自己最高の472キロに増量。格段に迫力と厚みは増したものの、逆に失ったものもある。一番の敗因は雨だが、他にも小さな要因が重なったのかもしれない。
今秋の天皇賞とJC二戦で引退を表明、ならば緒戦から後先なしの全力投球。放牧先から身体造りを見直し、トレセン入り後も切れと伸びやかさを重点に置き調教メニューを消化。木曜日発表の体重は468キロ、ボディーラインやフットワークは、春とは劇的に違う。2000mのGI実績は、世界規格においても種牡馬としての最大の評価となる。加えて、
父ディープインパクトの後継種牡馬となるための楔にもなる。思えば東スポ杯以降、
コントレイルは、まだ一度も本気で走っていない…。
二番手は
エフフォーリア、秋は早々に
菊花賞ではなく2000mの天皇賞参戦を表明。戦績は[4100]。一冠目の
皐月賞は2着を0秒5と突き放す完勝、2分0秒6は同じ稍重条件下で行われた前年の
コントレイルより0秒1速く、ダービーは鼻差2着ながら2分22秒5はレースレコード。全体時計だけではなく後半1000mは11秒7-11秒4-11秒5-10秒8-11秒6(3Fは33秒9)。5Fのなかに11秒台のラップが4つ、ラスト2Fめに10秒8という超高速ラップが飛び出し、瞬発力と持久力、レースの精度の高さを数字として具現。ダービー史上屈指のHレベル決着だった。
ただ、500キロを超す巨体ながら、春は緩さを抱えビッシリと攻めきれない。天栄からトレセン入りははかったように3週間前、実質の追い切りは2本という、コンパクトな調教
スタイルを繰り返してきたが、秋は約1カ月前の10月3日から追い切り開始。南Wで6F追いを3本こなし、522キロにパンプアップをはたした。大柄だが動き出しは俊敏、56キロも古馬相手のせめぎ合いでは追い風となる。
グランアレグリアも、もちろん首位争い必至。デビュー時458キロだった馬体は4歳秋以降、500キロを超すまでになった。絶対的スピードで
スプリンターズSを圧倒し、2020年の
安田記念は
アーモンドアイを力でねじ伏せ、本年の
ヴィクトリアマイルは1分31秒0・上り32秒6という猛烈な加速力で圧倒。続く
安田記念は中二週。高速時計は疲労を生み、身体に不安があると心に焦りが生じる。道中リズムを崩し進路を失ってしまったが、馬群を縫うようにしてあわやの2着。
グランアレグリアは、やっぱいいヤツだ。安田前後に痛めたノドの傷も完治。そろりそろりと坂路で乗り込み、先週から一気に南Wの6F追いにピッチを上げ、22-24日、そして火曜日と坂路で1-2本時計を出すハードワークを課し、27日の本追い切りの動きはまさに
ピーク。
さらに29日にも坂路で2本時計が出せる――藤沢師の執念、そしてすさまじいまでの体力と本気度がうかがえる。なんて、
大阪杯はコーナー4つの内回り2000m、加えて重馬場。前目に動かし抵抗を試みたが、スピードと瞬発力を武器とする馬にとっては真逆の馬場では4着も致し方なし。東京2000mはスタートしてすぐコーナーとなり、ピッチは上がらずペースは緩む。実質は3-4Fの決め手勝負となりマイル戦の延長線にあると考えてもいい。
ヴィクトリアマイルは1分31秒0、上りは32秒6。もう400mを12秒0-12秒0.24秒0で走れば、計算上は1分55秒0? 2000m対応も楽々。