【震撼】
タイトルホルダーは
イクイノックスと肩を並べる現日本競馬を代表する巨人。中長距離界シーンの力量はずば抜けている。3歳クラシックは
皐月賞2着、ダービー6着。ひと夏越えた
菊花賞は2着に0秒8差の堂々の逃げ切り。明け4歳緒戦の
日経賞は八分の造りゆえ際どい勝利となったが、ひと叩きした
天皇賞(春)は、前半1000mが60秒5、続く1000mは63秒1、そして最後の1000mは60秒0。11秒9-11秒5-11秒7という快ラップでまとめ7馬身差独走を果たした。
盾が
ピークかと思いきや、
宝塚記念は1000m通過・57秒6-2000m通過・1分57秒3。後半5Fめから先頭に並びかけ、11秒9-11秒5-11秒7とピッチを上げ、後続の脚をなし崩しに封じ込めた。終い2Fはさすがに12秒0-12秒4を要したものの、上り36秒1はメンバー中最速。
アーネストリーが保持していたレコードを0秒4更新する2分9秒7という快記録で、日本競馬の中長距離史上に名を刻んだ。
凱旋門賞はレース史上でも稀な超のつく豪雨。執拗なマークにもさらされスタミナを削がれたが、直線を向いたときは一瞬もしかして? ――
オルフェーヴルや
エルコンドルパサーは別格として、そのほかの日本馬ではもっとも内容の濃い
凱旋門賞だったように思う。
ただ、極限の不良馬場を力走した反動は大きく、
有馬記念の頃は血便が出た? (笑)。身体も闘志もこぢんまり、条件クラスの馬のように小さく萎んでしまった。歴史に名を残すGI馬たちも、多数の馬がどこかで
ピークを過ぎる。明け5歳となった
日経賞の印は対抗。〇を打って半信半疑で見守るしかなかったが、重心低く、一糸乱れることのないフォームで不良馬場を捉え、水分をたっぷり含んだ中山の坂を、ラスト2F・11秒9で駈け上り後続を子ども扱い。最後手綱を緩めたため終い1Fのラップは12秒4に終わったが、2着には1秒3差。
「震撼」という言葉は、あの場面に使うのだろう。強さの質やレベルがちょっと違っていた。調教タイムは
有馬記念当時と数字的には変わっていないが、地を捉えるグリップ力、力強い首使いと推進力は有馬の比ではなく、昨年春の上昇過程と同様かそれ以上のコンディションが整った。週末は雨、重馬場もスイスイ、加えて枠はロスなく運べる3番。ラ
イバルたちが馬場に泣けば、今年も圧勝の天皇賞となるかもしれない。
相手は4歳・
菊花賞上位勢。一番手には
ボルドグフーシュを指名。
菊花賞は前半1000m通過・58秒7というHペースの上に立ち、ラスト4Fめから11秒9-11秒9-12秒2-12秒9。肉を切らせて骨を断つ心を揺さぶるHレベル決着となったが、ハナ差及ばず2着惜敗。ただ、3分2秒4は同じ阪神3000mで行われた前年の
タイトルホルダーより2秒2も速く、高速の
菊花賞を勝ちあがった4歳馬は、
オルフェーヴル然り、
ゴールドシップ然り。
有馬記念でも勝ち負けを演じており、記録通り最速の上りで2着に駈けこんできた。
前哨戦の
阪神大賞典は1000m通過が64秒9の超スロー。終い1000mのレースラップはすべて11秒台、ラスト3Fは11秒4-11秒3-11秒7(34秒4)。上りだけの瞬発力勝負に0秒3差遅れをとったものの、体型的にややトモが流れ気味。トップスピードに入るためにはどうしても助走時間が必要となるが、天皇賞のペースはきっと甘くはならない。1Fとはいえ3000mよりは3200mのほうがよりスタミナと持久力を問われ、重適性は不明ながら、パンパンの良よりは湿った
パワー馬場のほうが連対確率は高くなる。
道悪対応が微妙だが、良馬場で施行されれば
ジャスティンパレスは首位も有望。
神戸新聞杯を境に本格化、乱ペースの
菊花賞も勝ち馬に準ずる形で積極的に推し進め、最後は3着に力尽きたものの、もがき盛り返す素振りは胸を打った。
有馬記念は
菊花賞3着激走の疲れもたまっていたか。1000m通過・61秒2という緩ペースにも我慢が効かず、勝負どころでフォームがバラバラになってしまったが、リフレッシュ期間を設け
阪神大賞典はキャリア最高の472キロに大幅にビルドアップ。狭いインに押し込まれても我慢が効き、残り1Fで馬群を断ち割り2着に0秒3差の完勝を果たした。半兄
パレスマリスは
ベルモントSなど北米重賞6勝を挙げた、成功力を備えたタフな名馬だった。中間の追い切り等をみても、さらなる進化が見て取れる。
菊花賞馬
アスクビクターモアも、〇▲と力量はほぼ互角。
皐月賞5着、ダービー3着、
菊花賞はレコ勝ち。中長距離界の道程は文句なし。
日経賞は身体の造りはほぼ満点。しかし気負いが空回り、まさかの出遅れ。本来渋った馬場も、そう苦にするタイプではなく、内外いろいろコースを探したけれど、シンガリ近くから追い上げる機会をまったく得られず。9着に沈没は致し方ない。しかし馬はまったく傷んでいない。休み明けをひと叩き、ガス抜きは完了。立ち回りは自在、持続力ある先行力は、ふたを開けたら直線平坦の京都に
ドンピシャかもしれない。
雨量が多くなるにつれ
ブレークアップが俄然ダークホースに浮上。
阪神大賞典はバテるどころか58キロで伸びていた。条件戦ながら稍重で2勝、重馬場の中山2200m楽勝歴があり、首位はどうかだが2着争いの最大の伏兵となる。
シルヴァーソニックは、レーンJとのコンビで
ステイヤーズS、サウジの3000mを胸のすく好騎乗でV2。
ステイゴールド、
オルフェーヴル系の味わい深さと面白さを伝える7歳馬です。ただ、雨は一粒でも嫌とか? 噂なんかほとんど信じないが、うーん。枠は外、雨だとさらに悩む。