【追っても追っても追い抜けない】
スワーヴリチャードが、渾身のロングスパートを決める。体質が弱く未完成だった3歳春、ダービー2着は仕方ない。しかし、ひと夏越した秋、
目黒記念を2分30秒0という好タイムで古馬を撫で切り。東京2500mのGIIを2分30秒前半以内で勝ち上がった馬は、その後G1馬になった馬も数多くいるが、勇躍挑んだ
有馬記念は、右回りにまだ身体がついて行かない。坂の頂上近辺で内にもたれ、GIがするりと手から逃げてしまった。
そうして迎えた4歳春。
金鯱賞はムチ3発で上りは33秒8。自己最高体重となり、後肢の踏み込みは深く、連れて首の位置と重心が低くなり、フットワークットは大地をつかみ滑らかとなった。
こうなれば、GI・
大阪杯は自信満々。発馬で後手を踏んだものの、隊列を読み切り、後半6ハロンすぎ11秒8にピッチが上がった場面で、後方15番手から一気に先頭。この時に使った脚は推定10秒7前後だったか。そこからさらに11秒1-11秒4-11秒6(3Fは34秒1)というHラップを繰り出し後続を完封。一頭だけ次元が違う競馬を演じて見せた。
秋の天皇賞も、前半はスローペースが濃厚。残り4F標識手前から1一気に1秒台にペースが上がり、持久力と瞬発力の両方を求められる、
大阪杯と酷似した展開になるが、そのレースプランは
大阪杯で学習済みだ。
安田記念は想定外の体調不良(10キロ減、夏負け?)、ゴール前踏ん張りが効かなくなり3着に敗れたが、木曜計測は530キロ、秋の充電は完了した。
強敵は
レイデオロの瞬発力。2017年のダービーは典型的な緩ペースの上り勝負となったが、同馬の3Fのソレは11秒5-10秒9-11秒4(33秒8)--ラスト2Fめに10秒9という特筆すべき数字を実測として具現。同馬の
父ディープインパクトも推定10秒5という破格の記録をマークしたが、11秒台を切ったケースは過去10年間では
エイシンフラッシュと
レイデオロのみ。並外れた加速装置と能力を示して見せた。
本年緒戦の
京都記念は久々、道悪、ルメール騎乗停止を受け乗り代わり。ドバイ遠征は
テンションが上がり4着に終わったが、馬体造りを再考し
オールカマーは2分11秒2の好記録で優勝。前をとらえようとする持ち前の闘志と加速力が完全復活。先週の追い切りで小さなアク
シデントはあったが、日曜追いでフォロー、直前追い切りはルメールが跨り、「問題ない」とニッコリ。皮膚はさらに薄く、馬体のラインはより鮮明になっている。
三番手は
マカヒキ、単勝も十分。紐解けば、2016年の
皐月賞は1分58秒1で2着、ダービーの決着タイムは2分24秒0、上りは33秒3。
バランスと総合力は近3年では一番だった。
凱旋門賞遠征の疲労が抜けきれず試行錯誤の時期もあったが、2着に敗れたものの、3コーナーから一気にマクりあげていった
札幌記念に復調気配がありあり。調教の動きも機敏、闊達なダービーの頃の
マカヒキが帰ってきた。
前日の土曜日は小雨、湿った馬場が残れば、
サングレーザーにも出番がくる。2000mの
札幌記念でイン強襲に成功、マイラーから中距離GI級へと脱皮にひとまず成功した。鞍上はモレイラ--失うものがなくなったモレイラは馬込みもタイトな進路チョイスも厭わず、鬼の形相で猛烈な突入を試みてくる。
馬体を立て直し、中距離路線に転じた
キセキは、
毎日王冠を積極的に好位で立ち回り1分4秒7・3着と奮闘。勢いや能力で
菊花賞を勝ったが、能力ベースは新潟2000mの
信濃川特別の1分56秒9・上り32秒9。
毎日王冠は適性や立ち位置を確かめるため好位策をとったが、まだ今回も
チャレンジャー。もうひとタメすれば、10秒台半ばのオニ脚が使えたりして。
がっちりと抑え込むのは相当力がいるが、
ヴィブロスは世界の超一流中距離馬が集う
ドバイターフを近2年1・2着。ツボにハマった際の脚は牡馬をも凌駕する。